研究課題/領域番号 |
19K04475
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
堀田 育志 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (30418652)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抵抗変化型メモリ / 酸化ハフニウム / シリコン / ハフニウムシリケイト / ハフニウムシリサイド |
研究実績の概要 |
Al/HfO2/Si構造の抵抗変化について、初期フィラメントの形成電圧を調査した結果、フォーミングプロセスフリーとみなせるほど、つまり通常の書き込み動作電圧の範囲内で初期フィラメントが形成されていることが分かった。この小さなフォーミング電圧の原因を明らかにするため、HfO2層中のハフニウムシリサイド(HfSi)または金属ハフニウム(Hf)のフィラメント形成が起こっていることを仮定して研究を進めた。まずフィラメントの正体を調べるため、XPS測定によって低抵抗状態にしたHfO2の化学状態分析を行った。測定の前提条件として上部Al電極の影響がないことと、外因的にHfO2の化学状態を変化させないことが要求されるため、これを両立する測定方法を考案した。測定を実施した結果、電極下のHfO2層の化学状態分析に成功し、さらにHf 4f、O 1s、Si 2pの内殻スペクトルの解析より、フィラメントの起源がこれまで考えられていたシリサイドではなく金属ハフニウムであることを明らかにした。一方、低いフォーミング電圧で初期フィラメンが形成されるのは、試料界面にハフニウムシリケイト(HfSiOx)が存在する試料に限られることから、ハフニウムシリケイトから金属ハフニウムへの還元反応に原因があると考えた。そこで、HfO2からHfへの還元反応とHfSiO4からHfへの還元反応のエネルギーを比較したところ、確かにHfSiO4からHfへの反応が起こりやすいことが分かった。この結果は、活性化エネルギーを直接評価したものではないが、試料形成後に界面に存在しているHfSiO4がフォーミング電圧を引き下げていると考えをサポートするものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は、申請書の計画の通り進展している。その中でも、Al/HfO2/Si構造の抵抗変化現象に関して、導電性フィラメントの起源に関する新しい知見が得られた。この知見は、界面シリケイト層がフィラメントのシードとなっていると考えるこれまでのモデルを一層サポートするものであった。さらにシリケイトと金属の反応式よりギブスエネルギーを求めることで、この反応の起こりやすさを系統的に理解するに至った。今後は、他の抵抗変化材料で行う研究においても、同様の評価を適用でき、またこれらの実験で考案した試料電極下の化学状態測定の方法は今後の実験においても有用な方法となる。初年度の段階で測定方法および評価基準を確立できたことは、大きな進展であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、HfO2以外の材料についてシリコンとの接合を形成し、抵抗変化特性の系統性を各材料のギブスエネルギーの違いとして理解していく。そこで酸化物生成のエネルギーが系統的に異なるY、Ti、Vを対象(比較としてHf)に、それぞれの酸化物を抵抗変化層として用いることで界面シリケイトシード層の形成様式を人為的に制御する。PLD法によって試料の作製を行い、XPS測定によって界面シリケイトの状態を測定する。さらに電気特性測定によって各試料間での抵抗変化特性の差異を測定するとともに、高抵抗状態と低抵抗状態における抵抗変化層の化学状態分析を行う。
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