MIS型ReRAMのエンデュランス特性を劣化させる原因を調査すると共に、その特性を改善する方法について研究を行った。MIS型ReRAMでは、シリコンに対して還元性の金属を含む酸化物を接合することで酸化物(I)/シリコン(S)界面に金属または金属シリケイトのシード層を形成し、その層を起点に抵抗変化が引き起こされる。そこで、これとは逆の考え方を、今度は金属(M)/酸化物(上部)界面に適用することでフィラメントと電極の過剰接触を抑制することを考えた。また、設計通りの変化が見られた場合、過剰なフィラメントが上部電極と強固に結びついていたことがエンデュランス低下の原因であると特定することができる。上部界面のフィラメント形成を抑制するバッファー層として、金属-Hf(抵抗変化層金属)-酸素の三元系反応を考慮して、Y2O3、TiO2、V2O5の3種類のバッファー層を挿入した。その結果、Hfに対して還元性の強い、つまりフィラメントを形成しやすくるするYで最もエンデュランス特性が劣化し、続いてHfと同程度の酸化・還元性をもつTi、Hfに対して酸化性のVという順に特性が向上した。バッファー層によって上部界面でのフィラメント形成を抑制することでエンデュランス特性が向上したことから、MIS型ReRAMにおいてエンデュランス特性の劣化は、導電性フィラメントが上部電極と強固に結びつくことによって起こっていることが明らかとなった。また、過剰に形成されたフィラメントが上部電極と接触することを抑制する方法が、エンデュランス特性向上に有効であることが分かった。しかし、本実験で行ったバッファー層を導入する手法では、当初の目的であった最も簡単なReRAM構造を実現するという点においては好ましくなく、バッファー層を用いずにこれを制御することが今後の課題となる。
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