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2020 年度 実施状況報告書

コンビナトリアルケミストリーによる新超伝導物質発見プロセスの確立

研究課題

研究課題/領域番号 19K04481
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

伊豫 彰  国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (50356523)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード新物質探索 / 新規超伝導体 / コンビナトリアルケミストリー / アンチペロブスカイト / 固溶体 / 電子相図
研究実績の概要

本研究課題は、コンビナトリアルケミストリー(CC)を用いることで効率的に新超伝導物質が発見可能なことの実証を目標としている。今年度は、前年度に発見したMg2Rh3P関連組成A-M-P (A = 希土類元素、M = Rh周辺の遷移金属)を中心に、元素の組合せを変えながら試料の作製と評価を繰り返した。その中で、(Ca, Sr or Ba)-(Pd or Pt)-Pの6種類の組合せ組成を有する6個のペレットを積み重ねて、900℃で数分間加熱した試料において、体積分率数%の約3.5Kの超伝導転移が観測された。使用した元素の組合せで生じうる化合物に超伝導体は存在しないことから、新規超伝導物質が生じたことが示唆された。(Ca, Sr or Ba)-(Pd or Pt)-Pについて、元素の組合せや合成条件を変えながら試料合成と評価を繰り返し、超伝導体積分率の大きな試料を作製した。その試料の組成分析から、(Ca,Sr):Pd:P = 1:3:1の物質で超伝導が生じている事、さらに結晶構造解析によって(Ca,Sr)Pd3Pという新規アンチペロブスカイト構造物質が超伝導の正体である事を突き止めた。興味深いことに、端組成物質CaPd3PとSrPd3P(いずれも新物質)は非超伝導体で、両者の固溶体において端組成物質とは異なる結晶構造に相転移して超伝導が生じる事が分かった。通常の物質探索では発見することは困難であり、CC法にいる物質探索のメリットが最大限に発揮された発見となった。(Ca,Sr)Pd3Pについて組成を制御した系統的な試料を合成し、結晶構造と超伝導性を示す相図を完成させた(A. Iyo et al., Inorg. Chem. 2020, 59, 12397-12403)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コンビナトリアルケミストリー(CC)を用いた新超伝導体探索を実施し、昨年度のMg2Rh3Pに引き続き、新規アンチペロブスカイト(Ca,Sr)Pd3Pを発見した。これは、本研究課題の目標であるCCを用いることで、効率的に新超伝導物質発見が可能であることを示す実例の追加となった。Mg2Rh3Pは、データベースに存在するAl2Mo3C型物質群からは予想しがたい元素の組合せであったが、今回発見した(Ca,Sr)Pd3Pも、CaPd3PとSrPd3Pが固溶体を形成することで構造相転移が引き起こされて超伝導が発現しており、通常の物質探索ではたどり着くことは困難であったと考えられる。以上の様に、CC法による物質探索により、効率的に、かつ予測困難な新規超伝導物質を発見できることを示すことができており、研究は順調に進んでいると評価できる。

今後の研究の推進方策

今回発見した(Ca,Sr)Pd3Pも、昨年度発見したMg2Rh3Pも、アンチペロブスカイト関連構造に属する。超伝導にはならなかったものの、BaPd3PやBaPd3As、SrPd3Asなどの幾つかの新規アンチペロブスカイト物質の合成に成功している。このように、アンチペロブスカイトニクタイドには、発見されていない新物質が数多く存在する可能性が示唆されることから、今後も、A-M-X (A = 希土類元素、M = Rh周辺の遷移金属、X = ニクトゲン)を中心に、CC法を用いた物質探索を行う。これと平行して、ランダムな元素の組合せによる物質探索も推進し、最終年度におけるCCによる新超伝導物質発見プロセスの確立を目指して、研究成果例を積み重ねていく。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Structural Phase Transitions and Superconductivity Induced in Antiperovskite Phosphide CaPd3P2020

    • 著者名/発表者名
      Iyo Akira、Fujihisa Hiroshi、Gotoh Yoshito、Ishida Shigeyuki、Ninomiya Hiroki、Yoshida Yoshiyuki、Eisaki Hiroshi、Hirose Hishiro T.、Terashima Taichi、Kawashima Kenji
    • 雑誌名

      Inorganic Chemistry

      巻: 59 ページ: 12397~12403

    • DOI

      10.1021/acs.inorgchem.0c01482

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discovery of Mg2Rh3P and Superconductivity Induced by Mg-Deficiency2020

    • 著者名/発表者名
      IYO Akira
    • 雑誌名

      Nihon Kessho Gakkaishi

      巻: 62 ページ: 219~220

    • DOI

      10.5940/jcrsj.62.219

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] バルクコンビナトリアルケミストリー法を用いた新超伝導体の探索2020

    • 著者名/発表者名
      伊豫彰
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会 シンポジウム「高温超伝導への新ルート開拓とその現状」
    • 招待講演
  • [学会発表] アンチペロブスカイト型リン化物CaPd3Pに誘起される構造相転移と超伝導2020

    • 著者名/発表者名
      伊豫彰
    • 学会等名
      新学術領域研究「量子液晶の物性科学」量子物質開発フォーラム
  • [図書] マテリアルズ・インフォマティクス 開発事例最前線の中の「バルクコンビナトリアル合成による新規超伝導物質の探索 」2020

    • 著者名/発表者名
      伊豫彰、川島健司
    • 総ページ数
      12
    • 出版者
      エヌ・ティー・エス
    • ISBN
      9784860437084

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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