研究課題
申請者らは高圧合成法によりSmFe5化合物をマイナー相として合成したことから、本研究では外的および内的圧力を用いて合成法の確立を目指している。RE-TM化合物(RE: 希土類、TM:遷移金属)の形成は、REとTMの原子半径比の最適条件を得ることが重要であり、このSmFe5相合成の最適条件を見出し、単相化を目指し、諸性質にについても調査する。主目的となるSmFe5相については、Sm-Fe混合体たる前駆体の微細化がその後の合成による単相化のキーと考え、昨年度は本予算で購入したボールミル装置を用いて、最適条件を検討した。本年度は、この条件を中心に得られた前駆体の高圧合成を行い、SmFe5相の収率を上げることを中心に検討を行った。また最近、研究代表者らは高圧下で希土類サイトにLi元素が多量に置換し、希土類より原子半径の小さなLiによる化学的圧縮の効果によって、GPaオーダーで得られる高圧水素化物相を常圧下で安定可させることができることを報告した。そこでSmなど希土類サイトにLiなど原子半径が小さな元素を置換して内的圧力を得ることで、SmFe5のより安定化についても検討を開始した。混合状態となった前駆体の微細組織は、100-500nm程度のSm粒子を、厚さ数10~200nm程度のFe相が取り囲むような形態を示した。これを300~1100℃、3~5GPaの条件で高圧合成を行い、出現相の調査を行った。前駆体の混合組織が微細化するほど、SmFe5と考えられる相の収率が下がる結果となり、この相がSm/Fe界面で生じる中間相として出現することが、より安定であることが示唆されたため、今後はSm/Fe拡散対実験を行う準備を始めている。またLi添加合金については、ボールミルによる前駆体作製は、仕込み組成通りのものが得られないことが分かったため、今後は前駆体と手混合による添加する方法を検討している。
2: おおむね順調に進展している
当初目的としていたSmFe5の単相化については、今年度は目標とする結果の逆の結果がえられたが、この未知相の安定性などについて再検討することで、収率を上げられるのではないかということが分かり、今後は安定化元素の検討など当初予定していた通りの計画で進めていく予定である。次年度には試料の磁気的測定を計画しているが、ナノコンポジット磁石などの観点では、Fe相が軟磁性カップリング相として高性能化に寄与する可能性もあることから、進捗の早い段階で単相化が得られなくても、磁石特性の評価へはつながるものと期待している。一方で、本研究の主目的であるSmFe5と期待される未知相の単相化については引き続き検討を行い、当初目的を達成する努力を続けていく。
まず、Liなど第三元素の添加方法などについて、引き続き検討を行い、それを高圧合成の前駆体作製に活かす。特にLiのなどヤング率の低い金属材料のボールミルによる混合粉砕実験の最適化が不十分であるため、離型剤や雰囲気を含めた検討を行う予定である。一方で離型剤の液体溶媒によっては、Smを水素化する可能性もあり、本研究の計画から若干スピンアウトした検討にはなるが、水素貯蔵や触媒としての可能性についても検討を行う。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Alloys and Compounds
巻: 851 ページ: 156071~156071
10.1016/j.jallcom.2020.156071
Materialia
巻: 15 ページ: 100956~100956
10.1016/j.mtla.2020.100956