極微細スピントロニクスデバイスでは、微細構造表面の寄与が大きくなるため、その表面磁気特性がデバイス特性を左右する。したがってその表面磁気特性を評価し制御することがデバイス特性の高性能化にとって重要となる。本研究では、デバイス特性の高性能化を目指し、微細構造表面における磁気特性が実デバイスのデバイス特性や磁化反転機構にどのように影響するかを理解し、その知見を基に高性能極微細スピントロニクスデバイス実現のための微細化技術の設計指針を明らかにすることを目的としている。具体的には、サブ10 nm領域のスピントロニクスデバイスとして提案されている形状異方性磁気トンネル接合デバイスの作製プロセスを確立し、材料・プロセスを変化させたときの熱安定性や電流磁化反転などのデバイス特性評価から、微細構造表面の磁気特性に関する理解を深める。
令和3年度は、令和2年度に提案した積層磁性体構造を発展させ、MgO挿入層の数を増やすことで、磁性層膜厚を小さくしながら比較的高い熱安定性を維持でき高速磁化反転が可能であることを明らかにした。実際に直径10 nm以下の磁気トンネル接合素子を作製し、世界最小直径2.0 nm(2022年4月現在)でのデバイス動作を確認し、直径5 nm以下のデバイスでSRAM置換用途も視野に入る3.5ナノ秒の高速磁化反転を実証した。また極微細素子を集積した際に懸念される隣接素子からの漏洩磁界について検討を行った。単一素子で外部磁界耐性を実験的に評価し、隣接素子からの漏洩磁界を計算から求めることで、直径10 nmを有する素子を用いて50 Gbit/cm2級の高密度が得られることを明らかにした。
|