研究実績の概要 |
本研究のターゲットとなるGaAsPN混晶は、原理的に、0.3 eVから2.0 eVと超広範囲のバンドギャップを実現可能である。加えて、シリコン基板(人類が有する唯一無二の大面積完全結晶)に格子間隔をそろえた状態(無転位結晶成長)を実現できる極めて有用な材料である。しかしながら,未だに窒素に関わる点欠陥制御がボトルネックとなって0.3~1.7eVの間でデバイス実証はない。本研究では、太陽電池応用に向け、1.7eV以下のバンドギャップをもつGaAsPN結晶の作製を目指している。 前年度に引き続きGaAsPN太陽電池セルについて、作製・評価を行った。また、その特性を元として、GaAsPN太陽電池のシミュレーション解析モデルを構築した。基板にはn型シリコン単結晶を用いた。結晶成長には、専用開発した分子線エピタキシー装置を用い、pn接合型の太陽電池を作製した。次に、電気的特性のシミュレーションに関しては、SCAPS softwareを用い、先行研究および予備検討で明らかにしたGaAsPN結晶の物性値を用いた。これに、実際の試料構造情報を適用し、標準太陽光照射時の光電流電圧特性をシミュレーションした。 結果として、最大で、開放端電圧 0.95V, 短絡電流 4.89 mA/cm2, 曲線因子 0.63, 電力変換効率3.0%の太陽電池特性が確認された。また、欠陥密度Nt=8.8×10^16 cm-2, p-GaAsPNのアクセプター濃度NA=3.2×10^16 cm-2, 放射再結合係数B=9.4×10-9 cm3/sとすることで、実験値とシミュレーション値が良好な一致を示した。また、前年度に比べて曲線因子も大きく改善した。
|