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2020 年度 実施状況報告書

顕微分光法によるⅢ族窒化物量子井戸構造の転位近傍高エネルギー発光の起源と機能

研究課題

研究課題/領域番号 19K04490
研究機関山口大学

研究代表者

倉井 聡  山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (80304492)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードIII族窒化物混晶半導体 / 量子井戸構造 / 転位 / ポテンシャル障壁 / 内部量子効率 / オフ角 / カソードルミネッセンスマッピング法 / 近接場光学顕微分光法
研究実績の概要

中温GaN(MT-GaN)層をVピット形成層としたInGaN単一量子井戸(SQW)構造における貫通転位近傍のポテンシャル障壁について、前年度に近接場光学顕微分光(SNOM-PL)法により得られた知見を元に評価・考察を進めた。GaN暗点と高エネルギー(HE)発光の発光強度像の比較およびそれらの相関関係評価からGaN暗点近傍にHE発光が分布しており、ポテンシャル障壁が形成されたことをMT-GaN層厚が異なる試料セットにおいて確認した。SQW構造においてもVピット径の増大に伴い障壁高さが増大し、その後飽和傾向を示すことが確認された。層間不均一を除いたポテンシャル障壁の評価を目的としたため発光強度は低く、内部量子効率(IQE)との比較には至っていないが、Vピット径と40KにおけるPL発光強度に正相関が確認された。また、Vピット形成層がInGaN超格子(SL)の場合よりもMT-GaNの場合の方が、同じVピット径でのポテンシャル障壁が高く、さらに多重量子井戸(MQW)よりもSQWの方が障壁が高くなった。これはInGaN/GaNシークエンスによる歪緩和が障壁高さに影響したためである。
派生課題として、オフ角が異なるスパッタ成膜AlNテンプレート上AlGaN MQWにおけるIQEの変化を、表面形状・発光分布の評価と関連付けて評価した。オフ角の増大とともに、一旦ヒロックが減少し平坦化し、過度なオフ角によりステップバンチングが発現した。これらのマクロステップへの優先的Ga原子の取り込みによって、PL発光ピークは一旦赤方偏移した後、青方偏移した。IQEは一旦増大した後、減少した。IQEの変化は表面の平坦度に関係しており、マクロステップにおけるGaリッチ局在領域の形成から期待される改善は見られなかった。これは、欠陥領域とGaリッチ領域の重畳が原因であり、成長時の欠陥構造制御が重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

MT-GaN層をVピット形成層としたInGaN/GaN MQW構造およびSQW構造の比較から、複数のHE発光が生じる原因の考察を終えた。SQWにおいても複数のHE発光が観測されたため、量子井戸面内の不連続な構造不均一が起源と結論づけた。この原因として、Vピットファセット境界部での面間拡散を指摘した。また、Vピット径増大に伴うポテンシャル障壁高さの増大はHE発光の短波長化によるものであり、このことはVピット端部からの距離に応じて、Vピットファセット上の量子井戸構造(組成、層厚)が変化していることを示唆している。以上のように、ポテンシャル障壁高さの定量評価は順調に推移している。他方で、マクロPL測定によるIQE評価を実施したが、評価に用いた試料がSQWであり発光強度が弱いことから定量評価に至っていない。
派生研究である、オフ角が異なるAlGaN MQWの表面構造とIQEの相関については、オフ角に対するIQE変化が明瞭に確認され、表面のマクロステップ構造と関連付けた考察が進んでいる。

今後の研究の推進方策

低温SNOM-PL法を用いた転位近傍のポテンシャル障壁評価については、MT-GaNピット形成層を用いた場合の障壁高さとIQEの関係を明らかにする点が未消化である。これは点欠陥導入起源となるMT-GaNを用いていること、HE発光の起源解明のためにSQWを用いたことにより、発光強度が犠牲としていたためである。今後は、InGaN SL/MT-GaN複合層をピット形成層に用いたMQW構造を用いることにより、MT-GaN(GaN)からの点欠陥伝播を効果的に抑制した上でSNOM-PL評価およびIQE評価を行う。Vピット構造との対応付けには過去に実績のあるCLマッピング法との併用を検討している。
派生課題である、オフ角が異なるAlGaN MQWの表面構造とIQEの相関については、オフ方向が異なる試料についての評価を同様に進めているところである。試料成長条件の最適化により大幅にIQEが改善された試料を入手している。この試料について更に詳細な空間分解分光による解析を進めることを計画している。

次年度使用額が生じた理由

評価試料の準備が遅れたことにより、SNOM-PL実験の計画を後ろ倒しすることとなったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は上記試料の提供が行われ次第、実験を行う際の消耗品に充当する予定である。
また、論文投稿の準備をしていたが、諸般の事情で年度内に間に合わなかったため、準備が整い次第投稿するために支出する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Off-cut angle dependence of internal quantum efficiency in AlGaN multiple quantum wells on face-to-face annealed sputter-deposited AlN templates2021

    • 著者名/発表者名
      S. Kurai, A. Fujii, R. Oshimura, Y. Akamatsu, F. Nakatani, K. Uesugi, H. Miyake,Y. Yamada
    • 学会等名
      The 8th Asian Conference on Crystal Growth and Crystal Technology (CGCT-8)
    • 国際学会
  • [学会発表] 中温成長GaN層をピット形成層に用いたInGaN単一量子井戸構造におけるポテンシャル障壁高さのピット形成層厚依存性2020

    • 著者名/発表者名
      湯浅翔太, 高俊吉, 槇尾凌我, 林直矢, 倉井聡, 岡田成仁, 只友一行,山田陽一
    • 学会等名
      2020年度 応用物理・物理系学会 中国四国支部 合同学術講演会
  • [学会発表] 高温アニールした微傾斜サファイア基板上スパッタ成膜AlNテンプレートに成長されたAlGaN多重量子井戸内部量子効率評価2020

    • 著者名/発表者名
      押村遼太, 藤井厚志, 中谷文哉, 倉井聡, 室谷英彰, 上杉謙次郎, 三宅秀人,山田陽一
    • 学会等名
      2020年度 応用物理・物理系学会 中国四国支部 合同学術講演会
  • [学会発表] 中温成長GaNピット形成層上のInGaN単一量子井戸構造におけるポテンシャル障壁評価2020

    • 著者名/発表者名
      倉井聡, 高俊吉, 槇尾凌我, 林直矢, 湯浅翔太, 岡田成仁, 只友一行,山田陽一
    • 学会等名
      第81回応用物理学会秋季学術講演会

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公開日: 2021-12-27  

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