研究課題/領域番号 |
19K04493
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小林 牧子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (90629651)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分極 / コロナ放電 / 脱分極 |
研究実績の概要 |
スマート工場内におけるリアルタイムモニタリング応用を最終目標とした、ゾルゲル複合体法により作製された多孔性圧電材料の分極条件最適 化に関する研究を行います。ゾルゲル複合体法により作製されたセンサは、薄膜形状でロバストであり、かつ曲面に適合可能なことから、工業 界での実用化が期待されており、作製を自動化したことにより、膜質の均質化は達成されましたが、特性にばらつきがあることが課題でした。 そこで分極時の出力電圧、分極雰囲気、帯電電位と圧電定数d33の相関性を調査することにより、デバイス実用化に向けて必要不可欠である、 品質保証を可能とすることを目標としています。本研究の目的は、ゾルゲル複合体圧電材料により作製された多孔性圧電材料に対する分極条件を最適化することで、一定膜厚における同一材料 の圧電定数d33の再現性を中心値プラスマイナス10%で達成し、スマート工場内におけるリアルタイムモニタリング用センサの実用化を加速さ せることにあります。近年、手動で行っていたスプレー工程を自動化したことにより、膜質の均質性は向上しましたが、実用化のためには圧電 特性が良好なサンプルの再現性の向上が課題でした。圧電特性にばらつきが生じた原因は、分極工程にあると考え、負電源によるコロナ放電分極も行い、特性の違い を比較したところ、PZT/PZTならびにBiT/PZTにおいて電源の極性で分極方向が制御できること、負電源を用いて分極を行うと耐熱性が向上することが判明しました。これは分極時と測定時の電界方向をそろえたことによると考えられます。また、パルス電圧印加を電極間に直接印加し、分極を行う方法も検討しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
負電源を用いたコロナ放電を用いることで、圧電定数d33とコロナ放電の極性には関係なく、圧電定数はおおむね安定していた。負電源を用いたコロナ放電により耐熱性が上がるものと上がらないものがありました。PZT/PZTならびにBiT/PZTというゾルゲル複合体の中では非常に有用性の高い物質の耐熱性を向上する方法がわかったことで、より実用化に近づいたといえます。また、分極と測定の極性が不一致でも耐熱性が変化せず、かつ効率的に分極できるゾルゲル複合体という存在も発覚し、その原理を探求することで、新規圧電材料の開発の糸口になると考えています。パルス電圧による分極は、分極自体は短時間かつ再現性が高く行えたものの、電圧が不足しており、d33値が低くなりました。
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今後の研究の推進方策 |
分極雰囲気をコントロール下にした上で純窒素、乾燥空気 、および純酸素の雰囲気(湿度:制御可能な最低湿度)により分極を行い、サンプル付近のイオン数および帯電電位の測定後、圧電定数d33を 測定し、圧電定数d33の変化およびそれぞれの条件下での再現性を確認します。圧電サンプルは自動スプレー法により作製された膜厚100ミクロ ンのPZT/PZTゾルゲル複合体とします。サンプルの感度、中心周波数等の超音波特性は、ポータブル探傷機で自動計測を行い、超音波特性の再現性も同時に確認を行います。パルス電圧による分極を、パルス電源の印加限界電圧を上昇させ、安定性を保持したうえで、d33値の向上を目指します。
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次年度使用額が生じた理由 |
負電源によるコロナ放電による影響の調査の研究が予想以上に進展し、また、新型コロナの影響で研究が途中で一時中断となり、分極雰囲気の研究が今年度に延期されたため。この予算で分極雰囲気の制御用グローブボックスを購入予定。
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