研究課題
前年度までの研究・成果は以下の通りである。(1)二次元電子ガスに対する標準的な散乱理論に基づいた移動度計算プログラム群の開発。(2)移動度計算結果とSiC MOS界面の移動度の実験結果の比較(キャリア濃度依存性、界面電界依存性、基板濃度依存性、温度依存性等)(3)計算と実験結果の比較より、フォノン散乱、クーロン散乱、ラフネス散乱では移動度の実験結果を説明できないこと。最終年度はSiC MOS界面で支配的な散乱機構について、散乱体の相互作用ポテンシャルと、散乱体の起源について考察を行った。移動度の実験結果より、基板濃度が低い試料では、キャリア濃度増加による界面の実効電界増大に対して移動度は減少するという特徴を示す。この実験事実はキャリア濃度増大に伴う遮蔽効果の移動度に対する影響がクーロン散乱より小さいということを示す。そこでクーロン散乱体より遮蔽効果が小さい界面双極子散乱による移動度を計算したところ、実験結果を再現することがわかった。界面双極子は界面に欠陥による電荷分布の乱れがあるとすると、欠陥のポテンシャルの多重極展開の第1項(欠陥が中性である場合)として導ける。つまり界面の電荷分布の乱れは双極子ポテンシャルとして近似的に記述できることから一般的に存在することが分かる。SiCは化合物半導体であり、SiC側の界面の結晶構造の乱れが界面電荷分布に及ぼす影響は小さくないと予想できる。双極子散乱移動度計算と実験の比較を詳細に行い、双極子散乱移動度はSiC MOSFET移動度の様々な実験結果を説明することを示した。本成果は米国物理学協会の雑誌(Journal of Applied Physics)の論文として発表された。
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Journal of Applied Physics
巻: 131 ページ: 145701~145701
10.1063/5.0086172