研究課題/領域番号 |
19K04495
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中嶋 誠二 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (80552702)
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研究分担者 |
藤澤 浩訓 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30285340)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 擬似ドーパント効果 / 強誘電体 / ビスマスフェライト / 薄膜 / グラフェン / 転写 |
研究実績の概要 |
1.Au/BiFeO3(BFO)構造の電気的特性と帯電界面における疑似ドーパント効果の検証とその制御 硬X線光電子分光法を用いて測定したBi4fスペクトルのデータ解析を実施した。その結果光電子の脱出角が低角であるときBi4f結合エネルギーは低結合エネルギー側へシフトしていることが分かり、Au/BFO界面でBFOのエネルギーバンドが上に曲がっていることを始めて見出した。これは、BFOの分極電荷とフェルミ準位の影響を受けているものである。今後は分極反転前後において同様の測定を実施する。 2.BFO薄膜上へのグラフェン転写プロセスの確立 強誘電体BFO薄膜上へのグラフェンの転写プロセスを検討した。イソプロピルアルコールを用いたウェットプロセスで良好な結果が得られた。また、酸素プラズマによるグラフェン膜のパターニングにも成功した。グラフェン/BFO構造のX線光電子分光測定を行った結果、分極反転前後で若干のピークシフトが確認されたが、グラフェン/BFO界面に吸着している水分子の影響がまだ残っており、次年度以降ドライプロセスも検討する。 3.強誘電体BiFeO3薄膜への帯電ドメイン壁の導入 帯電ドメイン壁における疑似ドーパント効果の検証とその制御を実現するために、任意の場所へ帯電ドメイン壁を導入することを試みた。収束イオンビームによりSrTiO3表面へ微細構造を形成することで、その上にBFO薄膜を形成した際に帯電ドメイン壁が導入される可能性を得た。さらに収束イオンビームによる微細加工条件を最適化することで、帯電ドメイン壁導入に最適な構造を探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は擬似ドーパント効果の確認のため、金属/強誘電体界面のバンド構造を詳しく調べた。また、2次元物質/強誘電体界面の擬似ドーパント効果を検証するために、グラフェンの強誘電体薄膜上への転写プロセスを検討し、平坦なグラフェン膜が強誘電体BiFeO3単結晶薄膜上へ形成されることを確認した。 これらの結果は当初予定していた計画に概ね沿っており、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は2019年度実施した。グラフェン転写プロセスを改良し、ドライプロセスによる転写を試みる。これにより、グラフェン/BiFeO3薄膜界面に吸着する水分子の影響を取り除くことが可能になる。また、グラフェン/BiFeO3薄膜界面における擬似ドーパント効果を詳しく調べるために、SPring-8において光電子分光顕微鏡(PEEM)測定を実施する予定である。これに関しては、既に課題申請を行い、ビームタイムの配分を受けている。 次に、強誘電体帯電ドメイン壁における疑似ドーパント効果の検証とその制御を実現するために、2019年度実施した帯電ドメイン導入プロセスを最適化し、任意の位置に帯電ドメイン壁の導入を試みるとともに、走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、その導電性を検証する。また、分極反転による導電性のスイッチングを検証する。 また、金属/強誘電体界面の擬似ドーパント効果に関しては、分極反転前後において硬X線光電子分光測定を実施する準備を行い、次年度へ向けてSPring-8へのビームタイム申請を行う予定である。 これらの結果から、最終年度には金属/強誘電体界面、2次元物質.強誘電体界面、強誘電体/強誘電体界面における擬似ドーパント効果の制御を実現する。
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