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2020 年度 実施状況報告書

ホットスポットと量子効果の増強を起源とする新原理磁気物質:センサ材料の新開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K04496
研究機関千葉工業大学

研究代表者

安川 雪子  千葉工業大学, 工学部, 准教授 (10458995)

研究分担者 小林 政信  千葉工業大学, 工学部, 教授 (70296325)
山根 治起  秋田県産業技術センター, 電子光応用開発部, 上席研究員 (80370237)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード電気電子材料 / 磁性薄膜 / 磁気光学効果 / プラズモン効果 / 貴金属ナノ粒子
研究実績の概要

本研究ではTbFeCo磁性膜の磁気光学効果(以下「MOKE」)に着目し、高感度、高S/N比、高速センシングを実現する新原理MOKE型・磁気センサの基盤となる「磁気プラズモニック物質」の開発を行っている。貴金属ナノ粒子から発生する局在表面プラズモン共鳴(以下「LSPR」)がカップリングすることによって、均一な増強電場、すなわち「ホットスポット」の発生を期待できる。このホットスポットのアシストで磁気プラズモニック物質のMOKEの増強を目指すのが本研究の基本的概念である。
本研究ではTbFeCo磁性膜と貴金属ナノ粒子、誘電膜等から構成される磁気プラズモニック物質を代表者らが物質設計し、作製・物性評価を行っている。2019年度は磁気プラズモニック物質の最適構造を確立した。従って2020年度は、貴金属ナノ粒子の微細構造とLSPRの発生状況の相関に着目した研究を実施した。すなわち貴金属ナノ粒子の作製条件をパラメータとして様々な条件下で貴金属ナノ粒子を系統的に作製し、電子顕微鏡像の機械学習をベースとした統計処理によって各ナノ粒子の平均直径、平均粒子間ギャップ、LSPRの発生状況を定量的に検証した。
その結果、貴金属ナノ粒子の平均直径、平均粒子間ギャップ、LSPRの発生状況は、作製条件に大きく依存することを明らかにした。貴金属ナノ粒子の僅かな作製条件の差異によってはLSPRが発生しないことも明らかとなった。2020年度は高効率にLSPRを発生する貴金属ナノ粒子の作製条件を確立することができ、この粒子の平均直径と平均粒子間ギャップの比率から、ホットスポットの発生を充分期待できることを明らかとした。このホットスポットをどのような実験手法により測定・観測するか、国内外の研究者らと2020年度に何度も議論し、ホットスポットの評価方法を決定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度までは磁気プラズモニック物質の構造最適化、すなわち積層する磁性膜、貴金属ナノ粒子、誘電膜等の材料選定、各層の膜厚最適化の面から本研究に取り組んでいたが、2020年度は本研究で中核となる貴金属ナノ粒子のLSPRの研究に重点をおいた。
統計処理により貴金属ナノ粒子の微細構造(粒子の平均直径、平均粒子間ギャップ)の定量評価を行い、これらの微細構造とLSPR発現の相関について明らかにした。また粒子の平均直径と平均粒子間ギャップの比率から、ホットスポットの発生が推測され、非常に困難であるホットスポットを如何に測定・観測するか方針を決定した。この方針に則って2021年度は貴金属ナノ粒子のホットスポットを実験的に検証する。さらに2020年度は磁気プラズモニック物質の強磁性共鳴測定を実施し、物質の磁気異方性をはじめとする詳細な磁気的評価も実施した。
従って研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

従来は、MOKEとLSPRの相互作用あるいはMOKEと表面プラズモン共鳴の相互作用に関する理論的な研究が学術誌に公表されてきた。それに対し本研究では実験的な検証をとおしてMOKEとLSPRの相関を解明する方針をとる。
LSPRの発現によりホットスポットが生じ、このホットスポットのアシストによってMOKEが増強すると代表者は推測している。しかしLSPRの発現は、ホットスポットの励起には必要十分条件ではない。そこで本研究では非常に困難なホットスポットの検出が必須となる。当初はホットスポットを局所光学顕微鏡の一種を用いて可視化およびイメージングすることを計画していた。しかし2020年度に国内外の光学研究者らと議論を重ね、この手法では代表者の磁気プラズモニック物質のホットスポットの検出は難しいとの結論に至った。そこで光学研究者らとの議論を基に、2021年度はホットスポットを分光学的に評価することにした。この評価から、ホットスポット電場の励起状態のみならず分布状態やその強度についても定量的に議論する。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は貴金属ナノ粒子を様々な実験条件下で作製し、その構造の定量解析とLSPR発生状態について系統的に評価を行った。貴金属ナノ粒子を作製するためのスパッタリング用ターゲットは既に現有しており、新規購入はしていない。また作製した試料の物理的特性を評価するための学外機器使用料も発生しなかった。そのため次年度使用額が生じた。
2021年度の研究費使用計画は、専門機関への試料の専門的な分析依頼、また磁気プラズモニック物質を作製している現有のマグネトロンスパッタ装置の高機能化の補完、学術誌への論文投稿料等である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [国際共同研究] 国立臺灣大学(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      国立臺灣大学
  • [雑誌論文] Dynamical-magnetic behavior of anisotropic spinel-structured ferrite for GHz technologies2021

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Yasukawa, Kouhei Nozawa, Taneli Tiittanen, Maarit Karppinen, Johan Linden, Sagar E Shirsath, and Shin Yabukami
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-020-79768-z

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Creation of Materials Based on Novel Principles Utilizing an Interaction between Magnetism and Electromagnetic Waves2020

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Yasukawa and Chitose Takahashi
    • 雑誌名

      Electrochemistry

      巻: 88 ページ: 515-521

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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