光変調分光システムを構築し、ハロゲン化金属ペロブスカイト太陽電池の実デバイスについて計測を行った。光変調分光システムはレーザー光を励起光として強度変調し、それに同期する透過率変化を検知した。励起光が有り、無しによって、太陽電池の透過率変化を調べるものである。変調周波数が100Hzから10mHzの間で透過率変化を検知し、てCole-Coleプロットにおいて50mHzに虚部最低値をもつ円弧が観測された。光強度依存性や励起波長依存性などの検討や文献等々から、(1)励起光変調によるイオン分布の変化との解釈に加え、ペロブスカイト半導体は温度上昇に伴い、バンドギャップが広くなる現象があることから(2)励起光変調による熱拡散の変化とも解釈された。現在、2つの解釈について温度依存性測定等々で区別を試みていている。一方で、界面でのイオン分布の変化がペロブスカイト太陽電池に与える影響を明確にするため、正孔輸送層(NiO)界面にCsCl、CsBr、CsIなどのハロゲン化塩層の形成した後、ペロブスカイト層を積層することでデバイスを作製し、電池性能が向上することを見出した。表面結合基とアルキル鎖を有する自己組織化膜(超絶縁体薄膜)では電流―電圧曲線がS字となり性能は向上しないが、ハロゲン化塩層は開放電圧と短絡電流密度が向上することからペロブスカイト層とハロゲン化塩層の間でイオン交換などが生じて、整流作用を生じているものと考えられ、絶縁層のトンネル効果のみでは説明できない効果があると考えている。
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