研究課題/領域番号 |
19K04502
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
米田 安宏 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30343924)
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研究分担者 |
西田 貴司 福岡大学, 工学部, 教授 (80314540)
小舟 正文 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90240960)
和田 智志 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60240545)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リラクサー強誘電体 / ナノ結晶 / ナノピラー / ナノドット / 2体相関分布関数 / 放射光 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標はリラクサー強誘電体の持つ構造的特徴を人工的に再現することである。研究分担者の西田、小舟、和田はそれぞれナノドット、ナノピラー薄膜、ナノ結晶の第一人者であり、それぞれの手法で強誘電体の作製手法を検討し、実践中である。中でもナノピラーに取り組んでいる兵庫県立大の小舟はビスマス層状化合物を用いてナノピラーの作製に成功し、物性測定のフェーズに入っている。優れた物性を示したサンプルに関しては放射光を利用した詳細な構造解析を行う予定である。 これらのナノサイズの構造体は、一般的に周期的構造を仮定した平均構造では精密な局所構造解析を行うことができない。そこで、放射光高エネルギーX線回折を用いた2体相関分布関数(pair distribution function, PDF)法を用いた分析法を和田の作製したニオブ酸カリウムナノ結晶を用いて行った。結晶成長中のサイズに応じて変化していくナノスケールオーダーの構造を可視化することに成功し、学会発表、論文発表を行った。和田研究室では、リラクサー特性を付与したナノ結晶の作製を試みており、同等のナノ結晶構造体を作製することができれば、放射光実験によってリラクサー特有の構造的特徴を抽出できることがわかった。 一方で、人工リラクサーから抽出された特徴的な構造をリラクサーと判別するために、従来型のリラクサー強誘電体の構造解析を進めている。サンプルはPb(Mg1/3Nb2/3)O3である。このサンプルは光散乱などで中距離レンジのガラスに類似したネットワーク構造を有していることが示唆されており、このガラス構造の抽出に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究分担者の小舟グループがナノピラーの作製に成功したことが大きい。特にナノピラーはボトムアップと微細加工のハイブリッドで構造特性を付加することができるため、我々としても最も有力視した作製手法であった。当初の計画では、ナノピラー強誘電体に従来型のリラクサー強誘電体の構造的特徴をフィードバックさせる計画であったが、ナノピラーの進捗が順調であるため、最適化されたナノピラーにおいても構造的特徴を抽出できるような放射光実験を取り入れることも考えていかねばならない。 今年度はナノ結晶のナノスケール構造解析が放射光高エネルギーX線回折を利用して可視化することを示すことができたが、バルク由来の従来型リラクサーでも検証しなければならない。また、典型的なリラクサー強誘電体であるPb(Mg1/3Nb2/3)O3を用いて実験を行なっているが、実験データを取得する回折計が2019年度の後半に全く利用することができなかったため、解析レベルのデータの取得には至っていない。回折計は原子力機構が装置の集約化に伴う移設を行ったためであるが、2020年度は年頭から利用可能であるため、実験を行っていきたい。 なお、薄膜サンプルの測定のために購入したプローバー付きのサンプルマウンターは納入されたが、実際に回折計に取り付けてのチェックは次年度に持ち越された。 放射光実験の一部が次年度実施となったものの、測定サンプルの作製が進んでいるため、総合すると概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に着手した時点では、西田らのチタン酸鉛を使ったナノドットが最も人工リラクサーに近い位置にあると思われてきたため、典型的なリラクサーから構造的特徴を抽出するために、同じ鉛系のペロブスカイトであるPb(Mg1/3Nb2/3)O3のナノスケール構造の抽出が必要であると考えてきた。しかし、今年度、小舟がビスマス系のナノピラーの作製に成功したため、鉛系のみならず、ビスマス系においてもバルク由来の従来型のリラクサーの構造的特徴を抽出しておく必要が出てきた。ビスマス系でリラクサー的な挙動を示す物質として(Bi1/2Na1/2)TiO3がある。Pb(Mg1/3Nb2/3)O3の測定が終わり次第、(Bi0.5Na0.5)TiO3の測定にも着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
回折計移設日程がずれ込んだため、調整時に必要な消耗品の購入が次年度となった。 次年度使用額は、令和2年度分経費と合わせて、物品費の消耗品に係る費用として使用する。
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