研究課題/領域番号 |
19K04503
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
伊藤 利充 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (80356485)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Ga2O3 / フェルミオロジー |
研究実績の概要 |
β-Ga2O3は第三世代パワー半導体として注目され、デバイス試作の成功例も報告されているが、基礎物性からの理解は十分ではない。デバイス化に有利な基板の結晶面方位について物性からの理解も進んでいない状況であり、早急な物性解明が必要とされている。初年度はde Haas van Alphen効果によりフェルミオロジー解明を目指して物性研究を行った、 ドナーとしてSiをドープしたβ-Ga2O3(Si濃度1e19/cm3)の結晶をフローティングゾーン法により育成した。得られた結晶はドナーにより青みがかり、ラウエ写真では明瞭なスポットとパターンが得られ、高い結晶性を示した。de Haas van Alphen効果の実験を行うために、a*方向(bc面に垂直な方向)、b方向、c方向の三方向に磁場がかけられるような形状(辺が三方向のいずれかになるような直方体形状)に育成結晶を加工し、測定用試料を準備した。MPMSにより温度2Kにおいて70kOe以下の磁場において磁化の温度依存性を測定した。三方向の磁場ともに磁化はほぼ単調な磁場依存性を示し、明瞭な磁気振動は観測されなかった。微小な磁気振動が重畳いている可能性は否定できないが、結論を出すためには感度が不十分であった。当初の試料の重量は0.1g程度であったため、感度を増すために重量を1g程度にまで増加させて測定を行ったが、明瞭な磁気振動は観測されなかった。70kOeまでの磁場ではサイクロトロン軌道を描くのには不十分である可能性があり、更なる高磁場での実験が必要と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は研究室内で可能な範囲での磁気振動の検証を試みるという計画通り、MPMSでの測定を行った。結果的には明瞭な磁気振動は観測されなかったが、結晶の大きさ・重量の調整等の工夫を行っており、計画通り研究を遂行した。
|
今後の研究の推進方策 |
磁場が90kOeまで印加可能なPPMSを用いることにより、Shubnikov de Haas効果、磁気トルクの測定を行い、磁気振動の検出を試みる。それでも磁気振動が観測されなかったり、より高磁場までの測定が必要な場合には、共同利用の高磁場施設において磁気振動の検出を試みる。検出に成功したら、磁気振動を様々な結晶方位について測定し、フェルミ面の形状を推測する。バンド計算との比較・確認を行う。ホール面の検出も試みる。様々な温度や磁場方向に対してデータを蓄積し、解析することにより、有効質量、キャリア数、散乱時間を見積もる。ドーピング量を変化させ、キャリア濃度依存性からフェルミ面の変化、バンド構造を推測する。異方的な移動度を推測し、デバイス特性についても考察する。デバイス化に最適な基板の結晶面方位についても推測する。一軸応力によるバンド構造の変化の検出にも挑戦する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
見込んでいた液体ヘリウム費用について運営費交付金より支出することが可能であったため、次年度に必要な液体ヘリウム費用として使用する計画である。
|