研究実績の概要 |
β-Ga2O3はワイドギャップの第三世代パワー半導体として注目され、デバイス試作の成功例も数多く報告されている。晶系としては単斜晶をとるため、デバイス特性について異方性も考慮した基礎物性から理解を進める必要があるが、その観点からの研究はまだ十分には進んでいない状況である。本研究では結晶の高品質化とともに、de Haas van Alphen効果、Shubnikov de Haas効果、抵抗率の異方性によりフェルミオロジーの解明を目指して物性研究を行った。特に最終年度には、双晶境界が物性に与える影響や異なる結晶方位の効果を取り除くために無双晶結晶の作製技術を開発し、無双晶結晶を用いたShubnikov de Haas効果、抵抗率の異方性の研究を行った。 試料は結晶育成を繰り返し行い、結晶から完全に双晶を排除することに成功した。ドナーとしては1e19/cm3程度の濃度のSiをドープした。 Shubnikov de Haas効果は、c軸方向に電流を流し、磁場をa*(bc面に垂直な方向),b,cの三方向に印加して、PPMSにより温度2Kにおいて90kOe以下の磁場において抵抗率の磁場依存性を四端子法により測定した。三方向の磁場ともに抵抗率はほぼ単調な磁場依存性を示し、明瞭な磁気振動は観測されなかった。 異方的な抵抗率は、それぞれa,b,c方向に電流を流すことにより四端子法により測定した。a,c方向については1e-2Ωcm程度の抵抗率であったが、b方向については1e-3Ωcm程度の抵抗率となり異方性が認められた。三方向とも温度依存性はほぼ同じであったので、この異方性は有効質量の異方性に起因すると推測される。バンド計算でも方向によって分散が異なることが示されており、実験結果をサポートする。本研究によりフェルミ面の形状に関するヒントが得られた。
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