ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)を用いたマイクロ波バンドパスフィルタ(BPF:Bandpass Filter)の自動設計技術を確立すべく、2021年度は畳み込みオートエンコーダ(CAE:Convolutional Autoencoder)を用いた特性計算の高速化ならびにそれを用いた設計法の研究開発に注力し、以下の研究成果を上げた。 (1) CAEを用いたBPFの高速特性計算モデルの開発:電磁界シミュレータによるBPFの特性計算は非常に多くの計算資源と時間を要し、設計高速化のボトルネックとなっている。そこで、本研究では平面BPFの高速特性計算のために、電磁界シミュレータの代わりとなる新たな代理モデルを提案した。本モデルの入力パラメータは画像であり、任意のBPF形状を扱える。一方、出力パラメータはそのBPFの電気的特徴量である結合行列である。本モデルはCAEのエンコーダと全結合層からなり、教師なし学習と転移学習で構築される。共振器3段マイクロストリップBPFを例に従来の計算モデルと汎化性能を比較することで、提案モデルが教師データの作成に必要な電磁界シミュレーション回数を大幅に削減可能であることを明らかにした。 (2) 高速特性計算モデルを用いたBPF設計:提案モデルの応用例として共振器3段マイクロストリップBPFの設計を行った。BPFの初期構造の推定のために、まず、順モデルとは逆の計算を実行する逆モデルの構築した。逆モデルによって自動でBPFの初期形状を推定することができ、さらに高速特性計算モデルで周波数特性を瞬時に計算・評価できるため、高速設計が可能となった。本研究開発では2つの異なる仕様を基にBPFを設計し、提案設計法が平面BPFの高速設計に有用であることを実証した。
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