研究課題/領域番号 |
19K04509
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
山口 裕資 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 助教 (10466675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高周波ジャイロトロン / 二段共振器 / 後進波発振 / 超多周波数発振 |
研究実績の概要 |
テラヘルツ(0.1 ~ 10 THz)波は,光と電波の双方の特性を有することから,物質・生命科学や気象・天文学,高速の無線通信等を含む様々な分野において応用が期待されている.しかし発振源の開発が遅れており,未だ開拓途上の周波数領域(テラヘルツ・ギャップ)となっている.我々は,テラヘルツ帯で高出力・連続発振可能な唯一の電子管であるジャイロトロンを研究・高度化し,テラヘルツ・ギャップの開拓を進めている. 従来,ジャイロトロンは単一周波数での発振を前提として開発されてきた.しかし利用の拡大に伴い,広範囲の周波数可変性の実現が求められている.近年,特に物質・生命科学の分野において,細胞や生体関連物質に対するテラヘルツ波の照射効果に注目が集まっている.新たな効果の解析には,異なる多くの周波数,出力,そして偏波の変化に対して応答特性を調べる必要がある.そのため,周波数可変性の実現は急務であると言える.本研究では,ジャイロトロンへ複数の共振器を導入することで,発振周波数の多段階調節機能の実現を狙う. 二段の共振器を製作し,既存の管に搭載して,発振実験を行った.その結果,第一段共振器と第二段共振器を独立に励振でき,単一共振器では実現不可能な,非常に多くの周波数での発振を観測した.これまで,第一段共振器で 13,第二共振器で 9 つの共振器モードでの発振を確認している.加えて,各共振器モードに対して後進波発振による周波数の連続変化も得られ,110 GHz から 220 GHz の周波数帯において,約 30% の周波数にて発振可能であることがわかった.なお,後進波発振の運転領域において,複数の共振器モードが同時発振する現象も観測されているが,共振器へ入射する電子ビームの諸量(入射位置,速度ピッチ因子)を最適化することで,ほぼすべて独立に励起できる事もわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の管や材料を有効活用して先行的に実験準備を進めていたこと,また既存の電子銃ならびに制御系が広い運転パラメタ領域においても必要な性能を維持出来た事から,当初の計画以上に,実験を非常に効率的に行うことができた. これまで,管の製作を全て学内の工場にて行っていたが,業務縮小のために一部を外注する必要が発生した.そのため,多段共振器を搭載する新しい管の設計,および材料調達等に少し遅れが発生している.今後,工作の業者選定とともに,作業を急ぐ予定である.
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今後の研究の推進方策 |
まず二段共振器に対し,基本波のみならず第二次高調波での超多周波数発振の可能性を詳しく調べる.これら基本波発振そして二次高調波発振の実験結果にもとづき,三段共振器の設計を行う.二段共振器で得られた成果をまとめた学術論文の作成も進める. 並行して,共振器を搭載する専用の管を設計し,実験準備を進める予定である.電子銃とその制御系には既存の部品を利用できることがわかったので,予算配分を見直して,新しい管の機能向上を図る.その後,三段共振器を搭載して発振実験を開始し,周波数包含率の更なる向上を狙う.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 部品の調達方法を工夫した事,効率的な使用に努めた事で,当初の計画より経費を節約できたため.また,一部の部品の設計と調達に遅れが発生したため.
使用計画: 新しく製作する管の機能向上に活用する.
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