新たに設計した三段共振器を電子管に搭載し,発振実験を行った.その結果,第三共振器において,予測していた 12 のモードの発振を確認した.これらのモードの後進波発振による周波数の連続可変幅は,5 GHz 程度であった.既存の第一,第二共振器の発振周波数域の外に,第三共振器の発振周波数域が追加され,120~220 GHz における周波数包含率は,27% から 32% へ上昇した. 発振計算によると,周波数包含率の上昇量は 12% 程度と予測されていたが,実験的に観測されたのは半分以下だった.第三共振器の発振周波数域が,第一,第二共振器に比して狭くなった一因として,電子ビームが予想外に強く第一共振器のモードと結合したことが挙げられる.第三共振器の発振に最適化した配位では,第一共振器内の磁場強度が大きく変化するため,第一共振器の発振域が大幅に狭くなると予測されていたが,実際には狭くならなかった.この第一共振器の発振が,第三共振器の発振を阻害して周波数の連続変化幅を狭めたと考えられる.第一共振器での不要な発振を抑制するためには,第一共振器内の磁場変化が更に大きくなる配置の採用が考えられる. 周波数に加え,第三共振器で発振する全てのモードに対して出力測定を行った結果,15 kV,0.4 A の電子ビーム入力に対し,いずれも数 W 程度となった.第一,第二共振器で発振するモードの出力(20 W 以上)に比して,第三共振器での発振出力は低かったが,この原因は不明である. 以上,共振器の多段化により,周波数包含率の上昇が得られた.一方,より前段の共振器と同時に発振するために,単独モードでの運転は難しくなる傾向が見られた.今後,多段共振器を搭載したジャイロトロンの実用化を進めるにあたり,共振器の数と各共振器での連続周波数可変幅の設定を最適化する必要がある.
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