一酸化炭素、二酸化炭素、可燃性の炭化水素系ガス、窒素酸化物、硫黄酸化物などの環境ガスなどガスの吸収線が中赤外波長帯には多数存在するため、高感度なレーザガスセンシング技術として有望である。また、光ファイバ通信、空間伝搬通信の波長域拡大としても注目されている。中赤外波長帯の半導体デバイスの研究は盛んになっているが、特に小型化のためのシリコン半導体のとの集積によるシリコンフォトニクスは非常に重要である。本研究では有機金属気相成長によりIV族半導体とIII-V族半導体の一括成長が可能な装置を用いて格子歪を緩和させつつ、上層への貫通転位を低減するメタモルフィック成長について検討を行った。 昨年までのInAs層よりも格子定数を大きくするため、今年度はInAsSb層による格子歪緩和を検討した。Sbの添加によりInAsとInSbの混晶となりSb組成の増加とともに格子定数は大きくなり、バンドギャップは減少する。したがって長波長領域への波長域の拡大が可能となる。しかしながら実験的検討の結果InAsの場合に有効であった低温成長と高温成長の2段階成長がInAsSbではV族の混晶比が成長温度に強く依存するため困難であることがわかった。そこで、InAsSb層を低温で成長し、高温でアニールする検討を行った。これにより、フォトルミネッセンスの発光強度の増大を確認した。また、InAsSb成長前にInGaSbを導入する検討も行った。この方法においても導入しないものに比べてフォトルミネッセンスの発光強度の増大を確認した。断面透過型顕微鏡による観察ではこれらの成長方法において、InAsSbとGaAsとの界面において転位アレイを確認し、上層の貫通転位が低いことを確認した。発光波長は4-5ミクロン帯をカバーし、ガスセンシングに適した波長である。今後はこの層の上に超格子構造を作製する検討や、電流注入構造の実現を目指す。
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