研究課題/領域番号 |
19K04519
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
小寺 正敏 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40170279)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電子ビームリソグラフィ / 無帯電条件 / 静電気力顕微鏡法 / フォギング電子 / マルチスケール分析 |
研究実績の概要 |
本研究は「電子ビーム露光過程の試料の表面電位を真空中で直接リアルタイムに測定する技術と、試料内外で見られる三次元帯電現象を高精度にイメージングするシミュレーションに基づき電子ビームリソグラフィの無帯電露光条件の体系化すること」を目的としたものである。 昨年度までの研究により試料表面のビーム照射点から横に数mm離れても存在しているフォギング電子の蓄積による電位分布は試料への-5Vの印加バイアスで消えることが分かったので、今年度の実験はすべてそのバイアスに固定した。今年度は照射ビーム直下における帯電電位の露光量による変化を中心に調べた。我々が昨年度発見した約340μC/cm^2の露光量で表面電位が零になるとの知見は重要だが、リソグラフィの生産現場ではそれより1/30程度の露光量でも表面が零電位になる可能性が報告されたことから、今年度は、より低露光量での帯電電位の挙動を明らかにすることを目的にして実験を行った。 その結果、露光量が約2.5μC/cm^2において再度表面電位が零になることが分かった。総合的には、露光量が零から徐々に大きくなるにしたがって、試料表面はまず正に帯電し、約1μC/cm^2で約1.3V程度でピークを打ち、それ以降急激に電位が低下し、2.5μC/cm^2で表面電位が零になり、つづいて露光量の増加にもかかわらず表面電位は約-0.3~-0.4Vを保ち、約100μC/cm^2以降から急に表面電位が上昇をはじめ340μC/cm^2で零となり、それ以上の露光量ではさらに急激に表面電位が上昇し1000~3000μC/cm^2にもなると表面は+2Vを超える値が示された。今年度はこの現象を説明するモデルを提唱し学会で報告した。 今後はモデルの定量的妥当性について確認し、異なる条件においても実験を行うことで本来の目的である無帯電条件を体系化すべく研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に我々が発見した約340μC/cm^2の露光量で表面電位が零になるとの結果に対するその1/30程度の露光量でも表面電位が零になるとの他研究機関の報告を受けて、当研究においても約2.5μC/cm^2という低露光量において試料が無帯電になることを確認した。この研究進展の中で、我々は5桁に及ぶ露光量変化に対して帯電電位の変化を体系的に調査した。得られたその変化を合理的に説明することができるモデルを提唱した。現状は、本研究の「電子ビームリソグラフィにおける無帯電露光条件の体系化」の目的に対して順調に研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
電子ビームリソグラフィにおける露光条件としては、電子ビームの加速電圧、ビーム電流、露光時間、露光面積、対物レンズと試料との距離(ワーキングディスタンス)、試料へのバイアス電圧、対物レンズからの漏れ磁界を含む電子光学系の様々なものがある。今後は電子ビーム露光における試料の無帯電となる最適条件ウィンドウや無帯電条件マップの作成に向けてさらに実験・研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該年度内の研究の進展が速く、従来の機器で実施できる実験内容を先行させて成果の充実に重点を置いたため、当初購入予定としていた機器の購入がかなわなかった。 (計画) 次年度には当研究の目的に向けた研究の広がりと重点課題をみすえて戦略的に研究を進め、効率的・計画的に機器の購入を予定している。
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