本研究の目的は、強磁性共鳴周波数を超えた超高周波領域の透磁率応用分野を新たに開拓する研究として、負透磁率特性を活用した表皮効果抑制線路を提案するものであり、高速伝送線路の低損失化・低遅延化を目的としている。 表皮効果損失抑制の有効性を示すため、負透磁率材料を用いた多層構造伝送線路の設計理論を確立し、特に、プリント配線における銅箔表面粗化に対する有効性の検証を進めた。当研究で確立した円形多層構造および矩形多層構造の電磁界理論を用いることにより、種々の材料の積層構造に対して最も低損失となる膜厚を設計することができる。 令和5年度は、円形多層伝送線路に関する研究を継続し、伝送線路の導体損失、磁性体損失および誘電体損失を加味して伝送線路全体の損失を計算する理論を基に、Sパラメータを算出できるように拡張することができた。これにより、ネットワーク・アナライザなどを使用した実測結果との比較ができるようになった。磁性材料の膜厚、導電率および飽和磁化などが既知であれば、透磁率および異方性磁界が未知であっても、伝送線路の測定結果から逆算できるため、使用する磁性材料の形状磁気異方性を考慮した実効的な透磁率を測定することも可能となった。 また、外部磁場を印加するための後付けのソレノイドコイルを設置することができ、試作した円形多層伝送線路を用いて外部磁場を印加した測定実験を行うことができたが、測定データの信ぴょう性については、まだ検討中である。 研究実績として、国内学会で関連する研究発表1件を実施することができた。
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