研究課題/領域番号 |
19K04522
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
金高 健二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (50356911)
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研究分担者 |
裏 升吾 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (10193955)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光集積回路 / 光導波路 / 導波モード共鳴 / グレーティング / 波長フィルタ / 光共振器 |
研究実績の概要 |
1.はじめに 薄膜光導波路に設けられた周期構造により、空間中の伝播光と光導波路中の伝播光(導波モード光)が結合して生じる導波モード共鳴(Guided-Mode Resonance : GMR)が、その特異な狭帯域波長特性により世界的に研究が盛んになっている。これまで実証されているGMR素子はほとんどが狭帯域反射特性を示すものであるが、波長フィルタや分光等の応用には狭帯域透過特性が求められることも多い。本研究の目的は、狭帯域透過特性を示すGMR素子の実現可能性を、理論的・実験的に探求・実証することである。 2.素子の設計 狭帯域透過特性を示すGMR素子を実現するため、昨年度は誘電体多層膜基板とGMR構造を積層集積することで基板面垂直方向の共振により狭帯域透過特性が得られることを確認した。本年度は、透明基板上のGMR素子において、2個の導波モードを用い、この導波モード間での干渉により透過特性を得る素子を考案・検討した。具体的には、2次元周期構造を用い、広帯域反射を示すGMR素子と、これと直交する方向に伝搬する直交偏光の導波モードによる狭帯域反射を示すGMR素子を同じ波長で動作させることで、この2個のモードを干渉させて反射をキャンセルし、透過特性を得る。この構造により、200nmの反射帯域内に、波長幅15nmの透過帯域を示す素子が得られることをシミュレーションにより確認した。 3.デバイス作製と特性評価 2個の導波モードを用いた新しい透過型GMR素子については、コロナ禍による実験計画の遅延により作製・評価には至らなかった。一方、透過型素子と同様に斜入射型素子も実用上は求められている。本年度は、斜入射に対して狭帯域再帰反射特性を示すGMR素子を、誘電体多層膜基板を用いて試作し動作を実証した。これにより、誘電体多層膜基板を用いた素子作製における実験上の知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
透過特性を示す素子の設計に関しては、作製許容誤差を含めた現実的に作製可能な構造を念頭に、様々な原理に基づいた素子構造の検討を進めており、研究計画にそって着実に進展している。デバイス作製については、コロナ禍により実験計画の延期を余儀なくされたためにやや遅れているが、これまで懸案事項であった反射性基板の取り扱いについて知見が得られている。全体的には、来年度も計画通りに研究が遂行可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
様々な原理に基づく新規構造の素子の基本設計を進めており、今後はこの検討を基に素子の作製と動作検証に向けた検討を進める。また、特性向上に向けた素子設計についても引き続き検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
素子作製のための材料や評価のための光学部品の購入、情報収集、成果発表のために予算を使用した。しかし本年度は、コロナ禍による実験計画の遅延と、出張中止のために残額が生じた。 次年度は、素子の作製と評価のための材料や光学部品を購入する。また、得られた成果についての学会発表、論文発表に使用する。
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