1.はじめに 薄膜光導波路に設けられた周期構造により、空間中の伝播光と光導波路中の伝播光(導波モード光)が結合して生じる導波モード共鳴(Guided-Mode Resonance : GMR)の研究が、その狭帯域波長特性により世界的に盛んである。これまで実証されているGMR素子はほとんどが狭帯域反射特性を示すものであるが、波長フィルタや分光等の応用には狭帯域透過特性が求められることも多い。本研究の目的は、狭帯域透過特性を示すGMR素子の実現可能性を、理論的・実験的に探求・実証することである。 2.素子設計 狭帯域透過特性を示すGMR素子を実現するため、誘電体多層膜基板上にGMR構造を積層集積することで基板面垂直方向の共振により狭帯域透過特性を得る素子を考案し、線幅0.1nmが得られる構造を理論実証した。次に、透明基板上のGMR素子において、2次元周期構造を用いて、広帯域反射を示すGMR素子と、これと直交する方向に伝搬する直交偏光の導波モードによる狭帯域反射を示すGMR素子を同じ波長で動作させ、導波モード間干渉により透過特性を得る素子を考案・検討した。狭帯域GMR側に2重周期構造を取り入れることで素子の微小化と狭帯域化を両立させ、100μm角以下のサイズで波長幅0.4nmの透過特性が得られる素子を考案した。 3.素子作製と評価 これまで、誘電体多層膜基板上にGMR構造を積層集積して作製した素子では、理論設計と近い特性が得られていなかった。本研究では、透過型素子と同様に有益で、作製尤度が比較的広い斜入射再帰反射型素子と集光再帰反射型素子の作製を検討した。構成する材料、成膜方法を検討することで、GMR構造の積層集積に必要な高温の後工程に耐え、理論に近い素子動作特性が得られた。これにより、誘電体多層膜基板を用いた素子作製における実験上の知見が得られた。
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