研究課題/領域番号 |
19K04524
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
海老澤 瑞枝 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部光音技術グループ, 主任研究員 (00510893)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 光導電 / フレキシブルセンサ / 硫化銀 / 金属ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
硫化銀薄膜を安定して形成するために銀薄膜の硫化方法の検討・考察し,銀薄膜の硫化進行度合いに対する光学特性および電気的特性の関係を明らかにした. 銀薄膜の硫化方法には,硫黄加熱雰囲気中の暴露と硫化カリウム水溶液への浸漬を試みた.これまでに光電特性を確認している100nm以下の銀薄膜をサンプルとし,実験を行った.いずれの方法も温度や濃度によって硫化速度は変わるが,膜厚増加が約10%/minを超えると膜の剥離や割れが生じた.硫黄雰囲気中への暴露は,フレキシブル基材の耐熱温度以下で行う場合,数時間オーダの硫化処理が必要となる.一方,硫化カリウム水溶液への浸漬では,室温で数十分オーダであった.産業応用可能なプロセスの確立という目的から,まずは処理時間の短い浸漬による硫化過程での,硫化進行度合いと光学特性および電気的特性を調べた.これまでの実験から,硫化処理後の膜厚が処理前の銀膜厚の130-170%程度のときに光電特性を示した.さらに硫化が進んでも光導電性は向上せず,完全な絶縁体となった膜では光導電性は得られなかった.このことから硫化過程の途中に最適条件があると考え,硫化途中の膜の光学モデルを構築した.モデルでは,銀とラフネスのある硫化銀の2層,かつ各層は互いにもう一方の材料が分散していると仮定した.この光学モデルを用いた分光エリプソメータの膜解析結果と電気的特性の対応から,基板側の硫化銀層にわずかに銀が分散し残存している状態で光導電性が得られそうなことが分かった.この残存割合と銀の分散状態を明確にすることが今後の課題である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫化銀薄膜の可視光に対する光導電性の実験から,銀薄膜の硫化終期で特性が急激に変化することが分かった.銀の残存割合の寄与が大きいと予想しているが,急峻な変化のため計画時の想定よりも実験の実施回数は増加したが,全体としては概ね計画通りである. 研究の進捗には直接関係ないが,現在実験で行っている硫化方法が安全性の点でやや課題がある.そのため,産業応用の際には代替方法を見つけることが望ましく,今後の新たな課題である.
|
今後の研究の推進方策 |
硫化銀薄膜の可視光に対する光導電性において,残存した銀の役割を明らかにする.これまで,硫化銀薄膜表面に金属ナノ粒子を担持した最に光導電性が高くなる現象を確認している.計画では,次年度に硫化銀薄膜に金属ナノ粒子を担持し,その効果を解明する予定であったが,残存した銀と等価の役割をするかも検討する.その上で,膜条件,成膜プロセスの最適化を図る.
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会の中止により旅費の使用がなかった.差額は次年度予算と合わせて,光電センサのデバイス化の材料購入に使用する予定である.
|