研究課題/領域番号 |
19K04533
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
藤田 孝之 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (50336830)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | エナジーハーベスタ / MEMS / 磁性薄膜 |
研究実績の概要 |
MEMSと融合可能な独自のネオジム(NdFeB)スパッタ薄膜磁石を用いた磁気反発力による衝撃方向変換機構を考案し,面外方向(厚さ方向)の衝撃を,直交した面内方向衝撃に変換する低背エナジーハーベスタの実現と,無指向性振動型エナジーハーベスタの実現可能性を模索する。 本年度は,磁性体から得られる磁気反発力により衝撃・加速度の方向転換機構の詳細を明らかにするため,単純な片持はりバネとマス構造をシリコンMEMS技術で作製し,磁性体薄膜と組み合わせたサンプルの評価を行った。梁の振動特性は通常バネ定数とマスで定義されるが,磁気反発力がバネ定数に重畳されることにより非線形な振動特性が得られることを用い,磁気反発力のて定量的な評価に取り組んだ。梁長さ3 mm,マス長さ5 mm,幅5 mmの片持ち梁構造をSOIウェハ(活性層:30 μm,支持層:400 μm)上に形成した。片持ち梁の機械特性測定のため,薄膜磁石に着磁処理を行わず加振測定を行ない,駆動周波数の上昇(up sweep)と下降(down sweep)を別々に測定し,ヒステリシスについても検証した。測定条件は,0.05 Gから0.5 Gまでの印加加速度において,周波数を100 Hzから200 Hzまでスイープさせた。片持ち梁の共振周波数は125 Hz,機械的Q値15.6が算出でき,共振特性には変位最大点が低周波側に傾いたソフトスプリング効果が見られた。同じデバイスを着磁後に同様の評価を行った結果,着磁前後で明らかに異なる特性が確認でき,磁気反発力が振動に影響していることが確認できた。 残念ながらスパッタ材料の都合により,成膜された磁性膜が十分な磁束密度を保持していなかったため,リワークに時間を要し,十分な評価が行えていない。今後,同サンプルを用いた評価を行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度末に発注,到着した特注のNdFeBターゲット材料を用い,スパッタ成膜実験を行ったが十分な特性が得られえなかった。調査の結果,ターゲット組成は同様であったが成膜に使用しているRFマグネトロンスパッタリング装置のマグネトロンに劣化がみられた。これによりプラズマ密度が低下し,厚いターゲットでは成膜性能が低下することが分かった。このため初期厚5 mmのターゲットを 3 mm厚まで研磨加工することで十分な性能が得られたため,引き続き試作,評価を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
磁性膜成膜の条件が整ったので,当初予定どおり,微細磁石配列の磁気力評価のためのMEMSデバイスを再製作し,スリット形状マスをx軸方向にのみ可動域をもつ微細ばねで支持し,マスの変位を光学的および電気的(くし歯電極による静電容量変化)に計測する。面内方向へのMEMS構造体変位の計測には市販のCDC(容量ーデジタル変換)回路を用いるが,状況によっては断面方向からのレーザ測距なども検討する。また,衝撃に対する応答,SRS(ショック・レスポンス・スペクトラム)解析で,面外方向への衝撃でどの程度,面内方向への励振が得られるのか,有限要素解析ソフトだけでなく,磁気モーメント法ソフトも活用して,動解析にも取り組んでいく。これまでに面外(Z方向)から面内(X方向)への方向転換機構については,解析を行ってきた。これに加え,直交面内(Y方向)からの衝撃も同じくX方向に変換できる機構,例えば斜め45度の角度をもった磁性体形状などについても検討を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究グループで共有している装置・消耗品費について,別予算で処理できたため予定よりも消費が少なかった。またCOVID-19の影響もあり,実験に取りかかれる日程の減少から実験予算の使用用途が限られた。 (使用計画) 磁性体ターゲット材料は,マグネトロンの強度の問題から,通常のターゲットに比べて厚くできない。そのため,エロージョン発生の時期が早期に訪れ十分な試作が行えないことから,厚いターゲットを少数購入ではなく,薄いターゲットを複数購入が必要となる。実験での消耗具合を適切に見極めて計画的に発注,研究を遂行していく。
|