研究課題/領域番号 |
19K04535
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
須賀 良介 青山学院大学, 理工学部, 助教 (20398572)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電波吸収体 / パッチ / 広帯域 / 帯域幅 / 積層 / 摂動素子 |
研究実績の概要 |
メタマテリアル電波吸収体の広帯域化について2つの構造を取り上げ研究を実施した。 なお本研究では、メタマテリアル電波吸収体として、金属板で裏打ちされた誘電体基板上に円形パッチを配列したパッチ配列電波吸収体について研究を進めている。
はじめに、積層型パッチ配列電波吸収体の広帯域化について検討した。同電波吸収体の等価回路を推定し、その等価回路を用いて帯域幅設計について検討した。設計に必要な無負荷Q値及び2つの共振器の共振角周波数を算出するために、比共振角周波数差及び比帯域幅の設計式を導出した。そして、本設計手法を用いた電波吸収体の設計例として、中心周波数5GHz、-15dB帯域250MHzを有する電波吸収体の等価回路を設計し、所望の特性が得られたことから、本設計手法の有効性を示した。またこれにより理論的に2層積層した場合に実現可能な最大帯域幅も明らかとなった。
次に従来からよく知られた摂動素子を使ったパッチ配列電波吸収体の広帯域化について検討した。摂動素子による縮退分離により直交する2つの共振周波数を実現できるため、広帯域な電波吸収体が実現できる。本構造における問題は、偏波変換率の低減と両共振周波数における共振抵抗の設計である。まず、偏波変換を抑制するために隣接パッチからの再放射波が互いに逆相となるよう、隣接するパッチに付加する摂動素子の配置位置を90度ずつ回転させた。さらに摂動素子の配置角度によって2つの共振抵抗の値を制御可能であることがわかったため、これを利用することにより低偏波変換かつ広帯域なパッチ配列電波吸収体の実現性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた通り、共振器の無負荷Q値と帯域幅設計の関係、また積層共振器を用いた場合における広帯域設計について明らかになった。また前者に関しては、広帯域化の設計限界についても明確とすることができたことから当初の計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、入射波の入射角度と偏波に対して所望の特性を得るための設計手法について検討していく。現在は、隣接するパッチ間の結合についてモデル化を進めており、同モデルに入射角度特性および偏波特性を組み込むことができれば、上記2つの特性も設計が可能となるはずである。また進捗の程度によっては試作実験についても進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は設計手法の開発が主題であったため、想定していたよりも電波吸収体の試作回数が減っている。設計自体は計画通りに進捗しているため、本年度に予定していた試作は次年度に実施する。
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