研究課題/領域番号 |
19K04539
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宇野 重康 立命館大学, 理工学部, 教授 (40420369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インピーダンス / 細胞 / CMOS / 集積回路 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
今年度は、センサー基板に接着した細胞の直下にある微小電極を用いたインピーダンス計測値を、コンピューターシミュレーションにより詳細に解析することに主に注力した。シミュレーションにおいては半球型の細胞と円形の電極が中心軸を共有するよう位置していると仮定した。実際の測定においては細胞と電極の相対位置はまちまちであるが、平均的な概略を予測するモデルとしては妥当であると考えた。昨年度までに確率されたシミュレーション手法を用いて、与えられた細胞サイズに対し、様々な電極サイズでのインピーダンス周波数依存性を計算した。その結果、細胞に対して同程度かそれ以下の電極サイズにおいては、細胞・基板間の隙間でのイオン伝導や、細胞膜の電気容量、更に細胞内部でのイオン伝導などの情報が異なる周波数において取得できる事を確認した。また、細胞の形状変化に伴うインピーダンス変化がどのように表れるかを再現することができた。このような知見は、今後の実際の細胞計測データの解析に役立てることができるとともに、最適なセンサー設計に生かすことができる。また上記に加え、10MHz帯におけるインピーダンス測定での寄生容量や寄生インダクタンスの影響を低減するために、CMOSチップ内に集積する電流増幅回路のシミュレーションを行った。回路では Transimpedance Amplifier に基づく回路構成とし、10MHzまで安定して増幅することが可能な仕様となっている。この回路を試作評価し、次年度のセンサーアレイ回路と統合する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は細胞を用いた実験での制約が生じたため、昨年度に達成されたCMOS微小電極アレイセンサーチップ上での細胞培養と計測の実施に遅れが生じた。その一方で、細胞インピーダンス計測に関する詳細かつ網羅的なシミュレーションを進めることができたとともに、微小電極でのインピーダンス測定で必要になる電流増幅回路の検討・設計・レイアウト・試作を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に十分に進めることができなかった細胞を用いた実験を積極的に進める方針である。具体的には、CMOSチップおよびその封止材料の細胞毒性低減と細胞接着性向上のための材料選定および界面改質を推進し、チップ上での細胞計測を可能にする。また、電流増幅回路の評価とセンサーアレイ回路との統合にも着手し、より広範囲の周波数で、より様々な細胞でのインピーダンス計測を可能にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していたCMOS集積回路チップを用いた電気化学測定および細胞を用いた実験を、より制約条件の少ない2021年度に行うこととした。このため、実験に関わる諸経費を次年度繰越として上記目的で執行する。また、今年度参加した学会がいずれもウェブ上でバーチャル開催となったため、旅費が発生しなかった。次年度の学会開催がどのような形式となるか未定であるが、もし今年度同様であった場合は、計上した旅費を実験費用として執行する。
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