道路橋の橋面舗装とコンクリート床版の境界面には、床版内部への雨水や塩化物イオンの侵入を防ぐために、床版防水層が設けられている。この防水層は、橋面舗装の打換工事の際に再施工される。打換工事では、舗装切削機によって床版を削ることを避けるために、アスファルト舗装を10~20 mm残存させて切削し、残存層は防水層とともにバックホウ等を用いて撤去される。切削残存層にはひび割れや剥がれなどの損傷が生じているが、床版と既設防水層が健全であれば、残存層を補強して不透水性を改善することで、不透水の中間層として再利用できると考えられる。 本研究では、橋面舗装の打換時における切削残存層を中間層として再利用することを目的に、厚さ20 mmの残存層にアスファルト乳剤を浸透させて不透水性を改善することの有効性を評価するとともに、有効な材料とその施工仕様について検討した。また、不透水性を改善した残存層のアスファルト中間層としての性能を評価し、この工法の妥当性について考察した。 残存層の損傷には、目視できるものと目視できないものがある。そのため、損傷程度を残存層の空隙率によって定量化することとし、現場から採取した残存層の空隙率を測定したところ6.5%であった。本研究で使用したアスファルト乳剤は、一般的なものよりも濃度が高い高濃度改質アスファルト乳剤とし、乳剤散布の効果を比較するため2種類のものに対して検討した。 検討の結果、高濃度改質アスファルト乳剤を標準量散布することで、残存層の不透水性の改善効果が認められ、一般的な乳剤よりも接着強度が高くなる傾向があった。また、乳剤が残存層の連続空隙に浸透することで、層としての強度を補強する効果も認められた。乳剤の種類による明確な差異は認められなかったが、高濃度改質アスファルト乳剤の塗布により、残存層を不透水の中間層として活用できることを確認した。
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