研究課題/領域番号 |
19K04549
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保 善司 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (50324108)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ASR / 再劣化 / モニタリング / 残存膨張 / 補修 / 凍結防止剤 |
研究実績の概要 |
2019年度は当該地域のASR劣化調査データおよび自治体の橋梁管理データの収集データの分析を行い、ASR劣化構造物の再劣化事例と環境要因の観点から再劣化原因の調査橋梁の選定を行った。選定においては、力学的な拘束を前提としない表面保護対策と力学的な拘束による膨張抑制対策の2つの対策の着目した。 前者の表面保護対策に関する橋梁については、凍結防止剤が散布され、漏水の影響を受ける橋梁を選定し、塗膜系表面処理の再劣化が生じ、その後再補修を行った橋梁を選定した。当該橋梁においては、再補修対策実施時に対策後の鉄筋の保護効果を検証するための自然電位モニタリングを継続しており、今年度もそのデータの継続的収集を行った。さらに、ひび割れなどの外観損傷の進展の有無の確認を点検車両によって行い、顕著な外観損傷の進展のないことを確認した。 後者の力学的な拘束による膨張対策については、橋脚にRC巻立工法を実施後に残存膨張による再変状を生じた橋梁を対象とし、橋脚部の水分率、塩化物イオンなどの環境要因に関する調査を実施するとともに、現状の部材としての膨張を把握するための膨張モニタリングを行うための基準点の設置を行った。 初年度の成果をまとめると、ASR膨張による再劣化原因の探求とその解決策のため、これまでの橋梁管理データに基づき、対象橋梁の選定を行った。また。次年度以降の検討のために必要な基礎的な調査とモニタリングの準備を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由その1;本研究の目的は、ASR劣化事例の多い北陸地方における対策後に変状を生じた実構造物における調査を実施し,再劣化の原因解明を行うとともに,原因解明,補修効果の検証に基づく新たな補修手法および補修戦略の提案を行うことである。この目的達成のため、初年度は、ASR劣化調査データおよび自治体の橋梁管理データの整理・分析結果からに基づき、当該目的を達成するためのASR膨張による再劣化原因の探求とその解決策のため対象橋梁の選定を行うこととしていた。上記研究実績で述べたとおり、原因解明とその対策検証を行うための2橋を選定を行うことができた。 理由その2;対策後の膨張モニタリングとしては部材の一箇所などを対象としたものが多いが、力学的な拘束による対策が実施された橋梁においては、構造物としての膨張が把握できるもにリングの準備が行えた。さらに、力学的な拘束を前提としない表面保護による対策が実施された橋梁においては、外観変状に加えて、内部の鉄筋腐食モニタリングが継続的に実施されること。 以上2点から当初計画通り概ね進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
・今後の推進方策 2020年度は、選定した2橋梁において設置したモニタリングを継続し、対策後の膨張挙動、腐食挙動などの部材性能に関わる諸データを取得するとともにに、その分析を行う。さらに、コンクリートの含水状態、水分供給状況、塩分浸透状況などの詳細なデータを取得し、その分析を行う。上記の分析結果に基づき、対策後の再変状の原因の分析とともに、補修対策後の部材性能への影響を定量的な把握を行う。 ・予期される次の課題とその対応 膨張に関しては、当該構造物は供用20年以上を経過しており、膨張速度も緩やかに進行するものと考えられる。その他季節的な変動を含めて、2020年および最終年度に渡り、膨張モニタリングを継続して行い、その膨張量を把握することを予定している。 ASRの反応性については、コア採取等の制約を受ける場合には、補修時点での調査、さらには同一骨材が使用された構造物でのASR劣化事例などから情報を補足し、その詳細を検証することによって、必要な情報を収集することを予定している。
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