当該地域のASR劣化調査データおよび自治体の橋梁管理データの収集データの分析を行い、ASR劣化構造物の再劣化事例と環境要因の観点から再劣化原因の調査橋梁の選定を行い、力学的な拘束を前提としない表面保護対策と力学的な拘束による膨張抑制対策の2つの対策の着目した。 前者の表面保護対策に関する橋梁については、凍結防止剤が散布され、漏水の影響を受ける橋梁を選定し、塗膜系表面処理の再劣化が生じ、その後再補修を行った橋梁を選定した。当該橋梁においては、再補修対策後のひび割れなどの外観損傷の進展の有無の確認を点検車両によって行い、顕著な外観損傷の進展のないことを確認した。腐食モニタリングの結果からは、表面保護対策によって再補修対策後の一定の効果が確認され、背面側の水分供給を抑制することでさらに高い効果が得られることを明らかにした。 後者の力学的な拘束による膨張対策については、橋脚にRC巻立工法を実施後に残存膨張による再変状を生じた橋梁を対象とし、橋脚部の水分率、塩化物イオンなどの環境要因に関する調査を実施した。凍結防止材の影響については、RC巻き立て部においては表面保護が併用されており、対策後の膨張によるひび割れが認められたが、塩化物イオンの浸透は限定的であった。膨張による影響が検知されてから長期経過しており、鋼板巻立てによる力学的拘束による対策を実施したものでは膨張進展は抑制されていた。RC巻立てによるものでは概ね膨張は収束傾向にあった。橋脚など部材厚が大きいものでは膨張が長期にわたり継続する場合には力学的拘束による対策は有効であるとともに,対策後の検証のためのモニタリングを組合せた維持管理を行う重要性が明らかとなった。また、モニタリングの導入を促進するためには、膨張モニタリングへのIoT技術の活用が今後の技術展開として期待される。
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