本研究の目的は,性質の異なる鉄筋コンクリートブロックを接続することでマクロセル回路を形成し,その時のターフェル勾配(分極抵抗)を評価することである. 令和2年度の実験では,アノード律速となるマクロセル回路の条件について検討を行ったが,アノード律速下でターフェル勾配を評価するには,カソード側鋼材の自然電位を変化させる必要があり,令和3年度はカソード側鋼材の自然電位を変化させる手法について検討を行った.アノード側ブロックの塩化物イオン量をセメント質量の2.4%に固定し.カソード側の塩化物イオン量を0%から2.4%まで増加させたところ,1.2%まではカソード側の自然電位が卑に移行して未接続時の電位差が小さくなるが,接続後のマクロセル電流量は増加することがわかった.ただし,接続の前後で電位の変化は小さく,明確な分極の傾向は認められなかった.さらにカソード側の塩化物イオン量を増加させると,電位差は若干大きくなるがマクロセル電流量は減少する傾向が認められた.結果的に,カソード側に塩化物イオンを添加すると電位が卑に移行し,アノード側との電位差は小さくなるが,塩化物イオン量がある範囲内であれば,明確な分極を示したうえでマクロセル電流量が増加することが分かった.したがって塩化物イオン量がこのような条件を満たす範囲であれば,アノード律速下で鋼材の自然電位を変化させてターフェル勾配を評価できると考えられる. 研究期間全体(令和元年度~令和3年度)で得られた成果は,性質の異なる鉄筋コンクリートブロックを接続することでマクロセル形成時のターフェル勾配を評価する手法を確立したことである.既往の研究ではミクロセル腐食の分極抵抗を延長してマクロセル回路のターフェル勾配を推定していたが,今回の研究でマクロセル回路形成時のターフェル勾配を直接評価することが可能となった.
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