研究課題/領域番号 |
19K04557
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐々木 謙二 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (20575394)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンクリート / 空隙構造 / 連続性 / 物質移動 |
研究実績の概要 |
本研究は,コンクリートの劣化に対する抵抗性を支配する物質移動現象を高精度に予測する手法の構築を目指し,水,気体,イオンの移動経路となる「空隙構造の“連続性”」を定量評価することを目指すものである.材料・配合・養生の異なるセメント系硬化体に対して,「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」を実施し,その結果をもとに「Ⅱ)空隙構造の連続性,物質移動限界深さを考慮した物質移動推定手法」の構築に取り組むものである.研究期間3年のうちの2年目である本年度は,「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」を中心に検討し,「Ⅱ)空隙構造の連続性,物質移動限界深さを考慮した物質移動推定手法」についても検討を開始した. 「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」は,水やイオンを硬化体内部で一次元移動させ,定常状態における着目物質(トレーサー)の深さ方向の分布量を測定することや,厚さの異なる試験体による気体やイオンの拡散係数測定試験により,空隙構造の連続性を定量評価する計画である.本年度得られた知見は,下記のとおりである. 1)飽水状態の試験体を一次元的に乾燥させ,乾燥後の深さ方向の水分残存量分布を測定して,空隙構造の連続性を評価したところ,水結合材比が小さくなるほど,混和材の置換率が大きくなるほど,空隙構造の連続性は低下し,また物質移動限界深さが小さくなることが示唆される結果が得られた.ただし,試験期間中の水和進行の影響を含み,その程度は試験体の水準によって異なると予想されることから,水和進行の影響を補正する手法を検討し,そのための追加測定を開始した. 2)試験体作製時にステンレス板電極を間隔を変化させて埋設し,電気抵抗を経時的に測定して,電極間距離と電気抵抗の関係より空隙構造の連続性を評価することを試みたところ,混和材を用いた試験体において材齢の経過とともに空隙構造の連続性が低下しているものと判断される結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究期間は3年を予定しており,2年目である今年度は,前年度に引き続き,材料・配合・養生の異なるセメント系硬化体に対して「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」を中心に実施し,概ね計画通りの実験を実施することができた.また,「Ⅱ)空隙構造の連続性,物質移動限界深さを考慮した物質移動推定手法」についても基礎的検討を開始することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,引き続き,材料・配合・養生の異なるセメント系硬化体に対する「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」を実施するとともに,その結果をもとにした「Ⅱ)空隙構造の連続性,物質移動限界深さを考慮した物質移動推定手法」の構築に向けて検討も同時並行で行う. 「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」については,長期材齢の試験体に対してトレーサーの存在分布に基づく空隙構造連続性評価試験を実施するとともに,空隙径分布や水和物相組成の測定も実施する. 「Ⅱ)空隙構造の連続性,物質移動限界深さを考慮した物質移動推定手法」については,「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」で得られた結果を直接的に組み込んだ手法を検討し,長期塩水浸漬試験体や実構造物調査の塩化物イオン濃度分布と比較検証を行う.
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