本研究は,コンクリートの劣化に対する抵抗性を支配する物質移動現象を高精度に予測する手法の構築を目指し,水,気体,イオンの移動経路となる「空隙構造の“連続性”」を定量評価することを目指すものである.材料・配合・養生の異なるセメント系硬化体に対して,「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」を実施し,その結果をもとに「Ⅱ)空隙構造の連続性,物質移動限界深さを考慮した物質移動推定手法」の構築に取り組むものである.研究期間3年のうちの最終年度である本年度は,「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」の補足実験を実施するとともに,「Ⅱ)空隙構造の連続性,物質移動限界深さを考慮した物質移動推定手法」について検討を行った. 「Ⅰ)空隙構造の連続性評価試験」は,水やイオンを硬化体内部で一次元移動させ,定常状態における着目物質(トレーサー)の深さ方向の分布量を測定することや,厚さの異なる試験体による気体やイオンの拡散係数測定試験により,空隙構造の連続性を定量評価する計画である.本年度得られた知見は,下記のとおりである. 1)飽水状態の試験体を一次元的に乾燥させ,乾燥後の深さ方向の水分残存量分布を測定して,空隙構造の連続性を評価したところ,水結合材比が小さくなるほど,混和材の置換率が大きくなるほど,空隙構造の連続性は低下し,また物質移動限界深さが小さくなることを明らかにした. 2)試験体作製時にステンレス板電極を間隔を変化させて埋設し,電気抵抗を経時的に測定して,電極間距離と電気抵抗の関係より空隙構造の連続性を評価することを試みたところ,混和材を用いた試験体において材齢の経過とともに空隙構造の連続性が低下しているものと判断される結果が得られた.
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