研究課題/領域番号 |
19K04560
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
鶴田 浩章 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (90253484)
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研究分担者 |
丸山 徹 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80330174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 表面含浸材 / コンクリート / シラン系 / アミノ基 / 中性化 / 分析 |
研究実績の概要 |
元年度は新たな劣化抑制方法の効果について検討するため、アミノ基を有するシラン系表面含浸材(以下、「アミノ系」と略す)を含むシラン系表面含浸材9種について基本性状試験、乾湿繰返し環境、屋外暴露環境においてコンクリートの中性化に対する効果の確認を行った。 土木学会規準JSCE-K 571および572に準拠して行った試験において、アミノ系はシラン系としては珍しく、吸水抑制効果が高くないことが明らかとなった。その影響から、中性化に対する抵抗性試験の結果においてはシラン系表面含浸材の中性化に対する抵抗性が低く出たにも関わらず、アミノ系は著しく高い中性化抵抗性を示した。この要因について、文献調査からアミノ基がCO2と反応しカルバメートを生成し透水・吸水抑制効果を低下させたことが影響していると推測した。一方、塩化物イオン浸透抵抗性試験では、他のシラン系表面含浸材と比較して、アミノ系は塩分浸透抵抗性も低いことがわかった。 これらの結果に対して、実環境での挙動を確認するために実環境に近い乾湿繰返し環境や屋外暴露環境における試験を行った。その結果、乾湿繰返し試験では、アミノ系が著しく優れた結果を示し、比較のために使用した、けい酸塩系表面含浸材の場合よりも優れた結果であった。また、屋外暴露試験においても4ヶ月時点では、それほど顕著な効果は見られなかったが、継続した1年後の結果では、他のシラン系表面含浸材の中性化抑制効果が低下したにもかかわらず、アミノ系では中性化抑制効果が維持され、よりよい結果を示した。 そこで、さらに前述したカルバメートの影響を分析により検証するためにフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により赤外線吸収スペクトルを測定した。その結果、アミノ系を塗布したコンクリートの表面からカルバメートに由来するピークが確認され、カルバメートの関与の可能性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度においては、アミノ基を有するシラン系表面含浸材に関する新たな劣化抑制法に関する検討を進めた。前述の研究実績の概要には含めていないが、シラン系とけい酸塩系の併用法における劣化抑制効果に関する検討や乾湿繰返しおよび屋外暴露など長期間が必要となる検討も含まれており最終的な結果が得られていないものがある。よって、検討の進捗としては進んでいるが、やや遅れ気味と判断した。 また、分析については、まず、分析手法の試行錯誤が必要であったため、結果を得るのに時間を要したが、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)による赤外線吸収スペクトルの測定により、アミノ系表面含浸材を塗布した場合の試験体表面にカルバメートの存在を示す結果が得られたことより、劣化抑制効果の要因の一つと推測されるカルバメートの存在の可能性が高まった。劣化抑制機構の考察については若干遅れ気味ではあるが、この点は新型コロナウイルスの流行の影響もあり、意見交換の実施が難しい状況が生じたことも影響している。このことから、分析においては試験体の提供に予想以上に時間がかかったこともあり、やや遅れ気味であるが、今後の展開につながる結果が得られた。 以上、全体としては想定の範囲内であるが、やや遅れ気味と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、アミノ基を有するシラン系表面含浸材を使用した場合のカルバメートの生成の根拠を分析により確実なものとすること、これまで乾湿繰返し試験や屋外暴露試験を行った試験体に対して分析を行うことによるカルバメートの存在の確認、シラン系表面含浸材とけい酸塩系表面含浸材の併用法における塗布面の分析など、分析を中心として検討を進めることとする。 さらに、新たな劣化抑制方法として、これまでに実績のない、表面含浸材の新たな組合せについても、基礎実験を行い、複合劣化に有効な併用法における有効な表面含浸材の選択例を明らかにすることを目指す。 特に、令和2年度においては、研究協力者として大学院生2名、学部生1名との連携を強化して、劣化抑制機構の考察に不可欠な実験データの取得も加速させる予定であり、遅れ気味の進捗を改善する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度においては、長期的な乾湿繰返し試験や屋外暴露試験を行ったため、結果を得るために時間を要し、分析等を行う試験体の提供が遅れて、使用予定であった研究費を次年度に回すこととなった。また、分析においても試行錯誤が多く生じ、予定より研究費の使用が少なくなった。 このことを鑑み、令和2年度においては、研究協力者を増員して試験体作製や分析の進捗を強化することを計画している。また、令和元年度に実施した試験の試験体を分析に回す準備は既にできていることや、新型コロナウイルスの流行下において、研究協力者が大学に出てくることができない中でも、継続試験は研究代表者が推進しており、令和元年度の試験を順調に継続していることもあり、結果が出た試験体についての分析を続けて行う予定である。
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