2021年度においては、主に劣化機構の解明を試み、その過程において劣化抑制効果への影響因子について検討を行った。 アミノ基を含むシラン系含浸材(以降、アミノ系含浸材と称する)については、以下の知見が得られた。・アミノ系含浸材Z、C と別の種類のシラン系表面含浸材を重ね塗りしたところ、Zに関して特に他の含浸材を先に塗布する組合わせの劣化抑制効果が著しく高いことが明らかとなった。・SEM-EDX分析では、均一なシロキサンオリゴマー層が生成することよりCO2 の侵入を遮断すると同時にZ含浸材とCO2の反応によりCO2の侵入を阻み、中性化抑制効果を高める機構が存在する可能性が確認できた。 次に、併用法に関しては以下の知見が得られた。・複合劣化に対して、新設構造物を想定した場合は中性化に対する抑制効果が十分に発揮されていなかったが、既設構造物を想定する場合は、併用法が中性化と塩害の両方に抑制効果を示した。具体的には、けい酸ナトリウムとけい酸リチウムを主成分とするけい酸塩系表面含浸材とアルキルアルコキシシランを主成分とするシラン系表面含浸材の組合わせの効果が著しいことが明確となった。・劣化抑制メカニズムについて、併用法では含浸材原液と比べ、塗布後のラマンスペクトルに対応する強度が低下し、結晶構造が乱れた、もしくは結晶サイズが減少したことから、含浸材のコンクリート改質作用が有効になり、脆弱層の強度が向上することがわかった。含浸材を塗布することで、酸化カルシウムの含有量が減少し、二酸化ケイ素が増加し、ゲル空隙の量が影響を受け、中性化と塩化物イオン浸透を抑制する効果が得られることが分かった。・ラマン分光法による分析の結果、ラマンスペクトル:2400~2500cm^(-1)が併用法の反応過程に特有なピークの可能性があることが分かった。
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