研究課題/領域番号 |
19K04563
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
福留 和人 石川工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (60517548)
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研究分担者 |
野間 康隆 株式会社安藤・間(技術研究所), 土木研究部, 研究員 (30796123)
齋藤 淳 株式会社安藤・間(技術研究所), 土木研究部, 主任研究員 (60724961)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 養生 / 養生計画 / 水和解析 / 目標水和率 / 必要養生期間 / 混合セメント / 生産性 / 低炭素 |
研究実績の概要 |
コンクリート構造物の性能を確保する上で養生は重要な作業工程であり、養生計画を適切に立案することが重要である。本研究で提案する『セメントの水和解析に基づく養生計画立案手法』は、構造物中のセメントの水和率を解析的に予測し、目標の水和率に達するように養生計画を立案するものであり、養生の本来の目的に立脚したものである。昨年度に引続き,提案する手法の完成度および実用性を高め、社会実装を推進することを目的に以下の検討課題に取り組んだ。 (1)混合セメントへの適用性の拡大:混合セメントへの適用性を拡大するために,養生条件がコンクリートの性能に及ぼす影響を把握するとともに水和解析による評価の妥当性を検証した.その結果,提案手法の混合セメントへの適用性を確認できた. (2) 生産性向上との両立を考慮した養生計画立案手法の検討:提案する手法によれば,環境温度が低くなる場合や表層部の劣化に対する抵抗性が求められる場合など,長期間の養生が必要であることを合理的に算定できる。ただし,養生期間の延長は生産性低下に繋がることから望ましいとは言えない.そこで,生産性向上と養生による性能確保の両立を考慮した養生立案手法を開発することを目的に検討を加えた.その結果,設計材齢を適切に設定することによって生産性向上との両立を図ることが可能であることを見出した. (3)養生計画支援プログラムの開発:昨年度に引き続き,各種要因が必要養生期間に及ぼす影響を定量化することを目的に広範な条件でケーススタディーを実施し,必要養生期間の算定式の精度向上を図った.また,(1)および(2)の成果も組み込み,混合セメントへの適用性を高めるとともに,養生による性能確保と生産性向上の両立を考慮可能な,より完成度の高い養生計画立案支援プログラムの開発を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)混合セメントへの適用性の拡大:本年度は,提案手法の混合セメントを用いたコンクリートへの適用性を図ることを目的に検討を加えた.その結果,混合セメントを用いたコンクリートの性能に及ぼす養生条件の影響を実験的に把握し,さらに,水和解析結果と物質移動抵抗性の実測値を比較することによって,混合セメントを用いたコンクリートの物質移動抵抗性に及ぼす養生条件の影響の解析による評価の妥当性を検証した.その結果,混合セメントを用いたコンクリートは適切な養生を実施することによって普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートと同等以上の性能を確保できること,また,混合セメントの性能に及ぼす養生の効果を水和解析によって適切に評価可能であることが確認され,提案手法の混合セメントへの適用性を高めた. (2) 生産性向上との両立を考慮した養生計画立案手法の検討:提案する手法によれば,環境温度が低くなる場合や表層部の劣化に対する抵抗性が求められる場合など,長期間の養生が必要であることを合理的に算定できる。ただし,養生期間の延長は生産性低下に繋がることから必ずしも望ましいとは言えない.そこで,生産性向上と養生による性能確保の両立を考慮した養生立案手法を開発することを目的に検討を加えた.その結果,設計材齢を適切に設定することによって生産性向上との両立を図ることが可能であることを見出した. (3)養生計画支援プログラムの開発:本年度は,各種要因が必要養生期間に及ぼす影響を定量化することを目的に広範な条件でケーススタディーを実施し,必要養生期間の算定式の精度向上を図った.さらに,算定式の予測精度の向上と(1)および(2)の成果を組み込むことで,混合セメントへの適用性を高めた汎用性が高く,さらに,養生による性能確保と生産性向上の両立を考慮可能な,より完成度の高い養生計画立案支援プログラムを開発することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,養生計画立案手法の高精度化,養生計画立案支援プログラムの完成および社会実装の推進のために以下の検討課題に取り組む. (1)低炭素型セメントへの適用性の拡大:カーボンニュートラルの実現のためには,低炭素型セメントの利用拡大が必須である.そこで,既往研究よる実験データおよび実験データを用いて解析プログラムの低炭素型セメントへの適用性を確認するとともに,提案する養生計画立案手法により低炭素型セメントを用いた時の必要養生期間の算定を試みる. (2)低炭素化と生産性向上との両立を考慮した養生計画立案手法の検討:セメントの低炭素化には高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混合材の混合率を高める必要があるが,一般的に使用されているB種混合セメントより長期の養生が必要であることが想定され,生産性の低下につながる可能性は高い.そこで,低炭素化と生産性向上との両立を考慮した養生立案手法を開発することを目的に検討を加える. (3)養生計画支援プログラムの開発:本年度は,さらに広範な条件でケーススタディーを実施し,昨年度までに導出ている算定式の精度向上を図る.さらに,(1),(2)の成果も組み込み,混合材の混合率を高めた低炭素型セメントへの適用性を高め,さらに,低炭素化と生産性向上の両立を考慮可能な完成度の高い養生計画立案支援プログラムの開発を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:発表のために参加した学会が全てオンライン開催に変更されたことおよび研究打合せを温ライで実施したことから,旅費分が残額となった. 使用計画:本年度,発表のための学会参加および研究打合せで使用予定である.さらに,低炭素型セメントを用いた追加実験の実施のために使用予定である.
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