研究課題/領域番号 |
19K04566
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山川 優樹 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80324010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 送電鉄塔 / 電力インフラ / 耐災害性 / 損傷・修繕シミュレーション / 構造物の健全性評価 |
研究実績の概要 |
本研究では過酷な自然ハザード事象における過大荷重作用下での送電鉄塔の損傷・崩壊機構を解明し,耐災害性を評価する.さらに,損傷後の部材交換などを模擬した修繕シミュレーション解析を行い,修繕による性能回復程度を定量的に明確化する.その結果に基づいて,災害後の点検業務に適用しうる健全性判定指針と修繕方法策定指針の構築を目指すことが本研究の趣旨である. 研究期間の2年目である2020年度は,研究計画調書に記した研究項目1~4のうち下記の研究項目に取り組んだ.前年度(2019年度)に実施した研究成果をベースとして,それを発展させた内容である. 研究項目2:災害時に想定される鉄塔の損傷レベル・損傷形態の体系化を行った.その結果,強風被害想定時と地盤変状に起因する脚部不同変位発生時では鉄塔の損傷形態が顕著に異なることが確認された. 研究項目3:前年度に開発した鉄塔の修繕シミュレーション手法を活用し,損傷部位の部材交換による修繕を模擬したシミュレーション解析を実施した.脚部不同変位発生時については,部材交換による修繕のほかに脚部不同変位除去による修繕を模擬した解析も行った.その結果,強風被害想定時は部材交換によって強度が大きく回復し,修繕後の耐荷力は無損傷時と比較して90%程度まで回復する結果が得られた.このことから,強風等による損傷では,適切な部材交換による修繕の有効性が確認された.一方,脚部不同変位によって損傷した部材を交換する修繕を行った場合は,修繕効果がほとんどみられない場合があることが確認できた.これに対して,脚部不同変位除去による修繕を行った場合は,修繕の有効性が期待できる結果が得られた.以上の結果から,損傷の要因や形態に応じて修繕方法を適切に選択することの必要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究では,研究計画段階で想定していなかった興味深い解析結果が得られた.様々な自然ハザード事象下での送電鉄塔の損傷に対して効果的な修繕方法の提案が期待でき,研究最終年度の成果取りまとめに弾みがついた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究最終年度であるため,研究計画調書に記した「研究項目4:損傷を受けた鉄塔の健全性判定指針および修繕方法策定指針の構築」に取り組む予定である. 部材座屈等の局部的な損傷程度と構造全体系としての性能保持程度との関連性に重点を置いた検討を行う.これにより,例えば部材損傷などの点検結果に対して,耐荷力などの健全性保持程度を定量的に明示した健全性判定指針を提案することを目指したいと考えている. 修繕方法策定指針の構築においては,今年度の成果を踏まえながら,要求される性能回復レベルと修繕コストとの兼ね合いに関する議論も踏まえた技術提案をしたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)情報収集や研究打合せ,学会発表等をすべてオンラインで実施したため,旅費を要しなかった.研究補助謝金について,当初計画で想定していたよりも少ない人数・時間数で必要作業が遂行できたため. (使用計画)次年度は解析ケース数の増大が見込まれる.そのため,今年度に発生した次年度使用額は,解析データ処理にかかる研究補助謝金,ならびにデータストレージ機器の購入費用等に充てる予定である.
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