研究課題
本研究では過大荷重作用下での送電鉄塔の損傷・崩壊機構を検討し,損傷程度と鉄塔全体の耐荷力保持程度との関連性の解明を試みた.さらに,損傷後の部材交換などを模擬した修繕シミュレーション解析を行い,修繕による性能回復程度を定量評価した.これらの検討を通じて,災害後の点検業務に適用しうる健全性判定と修繕方法策定の指針構築へ向けた基礎的知見の整備を本研究の目的とした.研究期間の最終年度である2021年度は,研究計画調書に記した研究項目1~4のうち下記2つの研究項目に取り組んだ.現在,3箇年の研究成果を論文にまとめて投稿準備中である.研究項目3:強風等による過大荷重に起因する部材変形や,地盤変状等に起因する鉄塔脚部の不同変位により損傷を受けた送電鉄塔について修繕シミュレーションを行い,強度回復率により修繕効果を定量評価した.強風による損傷に対して部材交換による修繕効果を評価した結果,一定の強度回復が確認された.一方,脚部不同変位による損傷に対しては,部材交換による修繕と脚部不同変位を除去する修繕の2種類について修繕効果を評価した.その結果,前者では十分な強度回復がみられないのとは対照的に,後者では今回検討した不同変位の範囲で無損傷時耐荷力に近い値まで強度回復できることが確認された.研究項目4:損傷程度と鉄塔全体の耐荷力低下程度との関連性を見出すことを試みた.実際の点検業務において計測しやすい部材変形量や脚部不同変位量を損傷に関する指標とし,それらと強度低下率との関係を調べた.その際,損傷要因と損傷位置との関連性にも着目した.さらに前述の研究項目3の結果に基づいて,損傷要因や損傷様態に応じた適切な修繕方法を選定することの必要性を提言した.また,修繕方法による強度回復程度の相違の要因を明らかにするため,損傷時,修繕後,および修繕後の再載荷時における部材軸応力の状態に着目して考察した.
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (2件)
International Journal for Numerical and Analytical Methods in Geomechanics
巻: 45 (16) ページ: 2321-2370
10.1002/nag.3268
https://researchmap.jp/read0122059
http://msd.civil.tohoku.ac.jp/