東北地方太平洋沖地震や熊本地震の際に、免震支承を含む橋梁用積層ゴム系支承に亀裂や破断が生じたが、地震後の速やかな供用再開のためには、長期の復旧期間を要する免震支承の破断は回避する必要がある。本研究では、鉛プラグ入り積層ゴム支承を有する免震橋を対象として、構造系として粘り強く挙動し、かつ速やかな機能回復を実現可能な地震時損傷制御設計法について検討してきた。そして、RC橋脚の終局耐力に対する免震支承のハードニング開始点における水平荷重の比率を耐力比として用い、鉄筋の過強度の影響を含む橋脚の耐力のばらつき等を踏まえて、耐力比を1.2程度以上とすれば、50年間にわたる免震支承の経年劣化を考慮しても免震支承の破断可能性を十分に低減できることが明らかとなった。 一方で、支承条件を固定条件とした場合におけるRC橋脚としての固有周期が短い場合には、RC橋脚の降伏後における非線形応答の増加程度やそのばらつきが大きく、RC橋脚の終局変位への到達により、構造系としての終局限界状態が決定されやすいことも明らかとなった。特に、橋脚が河川内に位置する場合などのように、RC橋脚の速やかな復旧が難しい場合には、RC橋脚の過大な変形を抑制する方策も合わせて必要であり、設計における想定を超える地震動作用下などに、アンカーボルトを破断させることについても検討した。アンカーボルトに着目したのは、鋼材の材料強度のばらつきが小さく、確実に弱部とできる他、桁のジャッキアップの空間を確保できるため、また、アンカーボルトの破断により、それ以上の荷重が免震支承から橋脚へと伝達されないためである。各種不確定性を踏まえたフラジリティ評価を行うことにより、アンカーボルトを破断させることで、過大な応答を抑制し、免震支承のゴム部における破断、RC橋脚の終局変位への到達のような長期の復旧期間を要する損傷モードを回避できることが示された。
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