• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

営業車両応答のデータ同化と機械学習による軌道評価システムの実証研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K04570
研究機関東京大学

研究代表者

蘇 迪  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (40535796)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード軌道評価 / データ同化 / 機械学習 / 車両応答 / 携帯情報端末
研究実績の概要

本研究は携帯情報端末を計測装置に採用し,営業車両においても機器設置が比較的容易である車体と台車の応答から,軌道状態を評価する.本年度はデータ同化の逆解析手法を精緻な数値解析モデルで検証の上,実測データを適用した.また,浮きまくらぎ変状の検知に取り込む,機械学習の特徴認識手法を開発した.さらに,軌道表面変状である波状摩耗を実路線に観測し,レールの振動状況から波状摩耗の進展度合いを把握できる見込みを得た.
(1)詳細な車両解析モデルを用いてマルチボディダイナミクス解析ツールSimpackから検討を行い,車両走行速度が加速度・角速度データに与える影響について把握し,カルマンフィルタ等データ同化手法を利用して,車上の応答から評価可能な軌道変位の種類と波長範囲を選別し,長波長成分の軌道変状の状態推定アルゴリズムを提案した.
(2)短波長成分の代表的な変状である浮きまくらぎを検知するために,列車の振動計測データを対象とした,非線形性の強い時系列の予測でも有効な回帰型ニューラルネットワークのLong Short-Term Memoryアーキテクチャと,予測の不確実性を推定できるモンテカルロドロップアウトに基づく,検知手法を提案した.そして,提案手法を数値シミュレーションのデータに対して適用し,検知性能を検討した.提案手法により,既往手法と比べて性能が改善し,2 本以上の浮きまくらぎならば高精度に検知できた.
(3)無線加速度センサを波状摩耗発生区間の軌道に設置し,レール振動加速度を継続的にモニタリングすることで,波状摩耗の進展度合いを把握するシステムを構築し,営業線に試験導入した.加速度の計測結果から,レール凹凸を直接測定しなくとも,レール波状摩耗の進展度合いを把握できる見込みを得た.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)本年度には精緻な数値モデルを利用して算出した数値結果に基づいて,データ同化と機械学習両方のアプローチから軌道変状の推定手法の構築までを行った.車体や台車の応答の利用より,センサの設置は簡単になるが,検出しやすい軌道変状の波長成分は違う.長波長の変状成分はサスペンションシステムの影響を受けにくくになっており,逆推定手法が有効だと検証した.細かい変状由来の短周期振動成分,蛇行動などの車両走行時の自励振動現象などの影響が予想されることから,特徴認識などの評価方法の適用が必要になる.このような両方手法の数値解析の成功は,携帯情報端末を用いて,実用上問題のないレベルの軌道異常検知システムへ提案の準備ができた.
(2)データ同化による長波長変状の推定手法は,先行研究に行った営業車両の振動計測データを用いて,精度検証ができた.車体のみの実測応答から,開発した車両力学モデルを用いて,振動応答に基づく軌道変状の解析手法を改良し,実現象の振動特性の再現をできた.
(3)レール振動加速度の高頻度測定データに対応したデータ処理・分析手法を構築し,営業線における測定データに適用することで,波状摩耗の進展アルゴリズムの解明に,基礎データとしての用意ができた.

今後の研究の推進方策

(1)実路線において走行試験を行い,提案した機械学習に基づく短波長変状成分の評価手法を検証する.高精度センサと携帯端末で同時に計測し,かつ様々な走行速度で多数の走行試験を行うことにより,提案手法の精度検証を行うともに,携帯端末の有用性を検証する.
(2)今まで2軸車を仮定した車両動揺逆解析アルゴリズムを4軸車両に適用する場合,軌道高低狂いの推定精度は限定的となる.4軸の位置における軌道変位は軸間距離分の位置座標のずれを持つ同一の変数として扱うことで独立変数の数を1つに減らして安定的な解を得ることができると考えられる.マルチボディシミュレーションソフトウェアSimpackを利用して,様々な走行条件における車両応答を計算し,本逆解析アルゴリズムを適用して,逆解析性能を明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍につき,開発された手法に関する実路線の検証実験は行うことをできず,実験関係の予算を残った.翌年度は実装したシステムを利用して国内でシステム試験のための計測をするため,実験費用を支出する予定である.また実証実験を行なうため,関係の設備を購入する予定である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] RDSO/Ministry of Railways(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      RDSO/Ministry of Railways
  • [雑誌論文] Response based track profile estimation using observable train models with numerical and experimental validations2021

    • 著者名/発表者名
      Jothi Saravanan Thiyagarajan, Di Su, Hirofumi Tanaka, Boyu Zhao and Tomonori Nagayama
    • 雑誌名

      Smart Structures and Systems

      巻: 27 ページ: 267-284

    • DOI

      10.12989/sss.2021.27.2.267

    • 査読あり
  • [雑誌論文] LSTMとモンテカルロドロップアウトに基づく浮きまくらぎ検知手法の数値的検討2020

    • 著者名/発表者名
      久野元、蘇迪、長山智則
    • 雑誌名

      AI・データサイエンス論文集

      巻: 1 ページ: 536~544

    • DOI

      10.11532/jsceiii.1.J1_536

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 振動モニタリングによるレール波状摩耗の進展把握システムの開 発2020

    • 著者名/発表者名
      田中博文、梶原和博、神野響一、川西直、蘇迪、長山智則
    • 学会等名
      令和2年度土木学会全国大会第75回年次学術講演会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi