本研究では,長きにわたり国内外の鉄道で供用されているバラスト軌道に関して (1)曲線部バラスト道床の3次元的変状に関する定量予測手法を確立すること,(2)曲線部バラスト道床の3次元的な不可逆変形の発生・進展メカニズムを解明すること,の2点を具体的な研究目的に設定するものである.
令和元年度は,軌道曲線部の振動解析法の開発,およびバラスト道床沈下解析における弾塑性挙動の空間的ばらつきの評価解析法の検討に取り組んだ.また,令和2年度は,軌道曲線部を対象とした軌道振動解析法のプログラム実装,およびバラスト道床の複数の材料物性値の空間的ばらつきが振動解析結果に及ぼす影響の定量評価に取り組んだ.軌道振動解析やバラスト道床沈下解析における各種材料物性値・形状特性値の空間的ばらつきの評価は,当該課題で開発する解析法の信頼性の評価のために取り組むものである.
令和3年度は,軌道曲線部における軌道振動解析法,特にレールへの作用外力の設定方法を検討し,まくらぎより上部の振動解析から軌道パッド作用力を評価した.振動解析により得られた軌道パッド作用力はバラスト道床の繰り返し変形解析の作用外力として与えた上で,バラスト材の繰り返し変形挙動をcyclic densificationモデルを用いた弾塑性有限要素法で評価する解析手法を構成し,数値解析を行なった.バラスト道床は,軌道の曲率半径が大きいことを考慮し,2次元平面ひずみ場としてモデル化し,その3次元的な変形挙動を表現することとした.数値解析結果に基づき,カントが設定されている軌道曲線部のバラスト道床の繰り返し変形挙動について,特に変位発生や道床内部の変形の発生・進展傾向について検討した.また,当該解析法の信頼性評価に資することを目的として,レールに関する複数の材料物性値・形状特性値の空間的ばらつきが軌道振動応答解析結果に及ぼす影響について検討した.
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