研究課題/領域番号 |
19K04575
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小嶋 啓介 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40205381)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 常時微動 / 回転成分 / 空間自己相関法 / 位相速度 / 地下構造 / 若狭地域 |
研究実績の概要 |
地震被害予測の精度向上には,信頼性の高い地下構造モデルが不可欠であるが,北陸の様な地方では,地下構造情報が不足している.本研究では,①通常の並進3成分に回転3成分を加えた常時微動の6成分観測を行うことにより,従来の観測では求められない多くの地盤情報が収集できることを示し,②6成分を対象とした測線展開アレイ観測情報から,Love波とRayleigh波のパワー比や伝播速度などを効率的に算出する方法を導出するとともに,③算出された両表面波位相速度や並進成分と回転成分のH/Vスペクトルに基づいて,不整形性を含む地下構造を精度良く推定する方法を提案する.また④提案手法を原子力発電所が集中し,断層密度も高い福井県若狭地方で適用し,活断層による食い違い構造を含む3次元地下構造モデルの構築を行い,信頼性の高い地震被害予測を行い,地震ハザード情報を公開し地域住民の安全に資することを目指している. 2019年度には,福井県の勝山盆地ならびに高浜町を対象として,常時微動の単点3成分観測とアレイ観測を行い,H/VスペクトルとRayleigh波位相速度の算出を行った.また,微動の水平成分には方位特性があり,地表面の傾斜や地盤の不整形性と強い相関があることを示した.これらの成果は報告と論文として土木学会ならびに応用地質学会に投稿中である.また,最新の3成分回転速度計を購入し,振動台ならびに現場での性能の検証を行った.回転速度計による観測値は,複数の並進速度計による並進成分の微分から得られる回転成分と良好な一致が認められ,回転速度計と並進速度計を組み合わせたアレイ観測により,Love波とRayleigh波の分離や,それらの位相速度が算出できる見通しが得られた.さらに,並進と回転の6成分を対象とした,空間自己相関法の定式化と,計算プログラムが計画通り進行している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度には,回転速度計の性能の確認,複数の並進速度計から算出した回転成分との比較検証を行った.また,従来の並進3成分に回転6成分を加えて,空間自己相関法に適用する方法を導出し,プログラムの構築を行い,モデル地盤における理論的な6成分への適用を行った.さらに,回転速度計を並進速度計を用いて,列車の運行振動などを対象とした試験的な現場実験を行った.これらの成果を受けて,2021年度は若狭地域などを対象として,常時微動の6成分アレイ観測の実施と,その解析が計画通り実施できる見込みとなった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,大学キャンパス内で列車の運行振動や常時微動を対象として,並進・回転運動6成分測線展開アレイ観測を行い,成分ごとのスペクトル比,空間自己相関係数などの特性を検証する.また,6成分観測情報からLove波とRayleigh波のパワー比,位相速度などを算出するとともに,それらをターゲットする逆解析により,観測点直下のS波速度構造を推定し,従来の方法との比較を行う. 原子力発電所が集中し,活断層も密に分布する福井県若狭地域を対象として,上記で開発した常時微動6成分観測とその解析法を適用し,3次元地下構造モデルを高い精度で推定し,地域の地震被害予測の信頼性を高め,もって地域住民の安心・安全性向上に資することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の回転速度計が,ロシア製で発注から製作が開始されるため,納期に見込み以上となり,次年度に繰り越さざるを得なくなった.2020年度当初には納入され,計画通り研究が行える見込みである.
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