本研究の目的は、社会基盤施設の定期点検プロセスを革新する要素技術となりうる、光学文字認識技術を利用した「新たな変状図・点検結果総括表の作成手法」の創成である。この実現のため、次の3つの研究テーマを計画した。まず、【研究テーマ1】として、既存OCR技術により、コンクリート表面をデジタル画像としてスキャンした撮影画像展開図から「チョーク跡」を読取り、変状図・点検結果総括表の作成に必要とされる「文字・数値・変状図形の情報」に変換する技術(自動判読方式)を提案する。【研究テーマ2】として、チョーク跡の認識率の向上、また、様々な形でチョーキングされた手書き文字への汎用性を高めるために、深層学習を活用する。さらに、十分な認識率が得られない場合は、【研究テーマ3 】として、チョーキングする際の文字を規格化することにより対応する。 研究テーマ1および2のチョーク跡自動判読方式は、「検出:撮影画像から図形・文字の場所を見つける処理」、「特徴抽出:図形・文字の形状から、その特徴を特徴量として数値化する処理」、「識別処理:前述の特徴量を利用して、図形・文字を、いくつかのカテゴリー(文字・記号コード)に分類する処理」から構成される。令和元年度は、検出に関する研究を進め、深層学習手法のVGG16を利用した、撮影画像からのチョーク跡自動検出手法を提案し、高い検出率を得た。令和2年度は、撮影画像からのチョーク跡の抽出また特徴抽出に関連する研究を進めた。最終年度は、研究テーマ3に関する研究として、チョークによる手書き文字は安定して判読することが困難であることから、ロバストな機械認識を可能とするため、人工特徴点マーカーを活用した変状記録手法の研究を行った。さらに、定期点検にて取得された点検結果データの活用を目的として、点検データの蓄積、管理、オープンデータ化を見据えたデータ流通に関する研究を行った。
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