腐食した高力ボルト摩擦接合継手部では,高力ボルト取り換えと添接板補強を行う必要がある.仮支柱等を設置すれば安全な工事を行えるが,工事費が大きくなる.そこで本研究では,仮支柱等が不要なレトロフィット工法を検討した. 現在では,ボルト継手部を精緻にモデル化しての解析も可能である.しかし,計算負荷が大きく,適用性には限界がある.より簡便な解析を行うため,コネクタ要素の適用を検討した.片側3行2列の摩擦接合継手部を対象に,精緻なモデルとコネクタ要素によるモデルで解析し,さらに載荷試験を行なった.その結果,コネクタ要素解析の有効性を検証することができた. 次いで,実構造を参照して構築した,片側23行4列の腐食高力ボルト摩擦接合継手部を対象に,コネクタ要素解析で検討した.レトロフィット工法としては,ボルト取り外し,重ね板補強,ボルト設置を,小領域ごとに順次行うこととした.ボルト取り外しに伴い,継手部のすべり荷重が低下する.低下した荷重が設計荷重を下回ると,そのボルト取り外しは許容できない. 下側添接板は補剛材が設置されているため,5枚の板に分かれている.各板は4ないし5行のボルトを有している.本研究では,この5枚の板を,1枚ずつ順次,補強していくこととした.まず1行ずつボルトを取り外して添接板を補強することとし,補強する板の順序,各板の中でのボルト取り外し順序を検討した.種々のパターンを考慮した結果,継手中央部の板から工事に取り掛かり,板の中央部からボルトを取り外すパターンの安全余裕が最も大きかった. 作業効率向上には,複数行のボルトを取り外して,添接板補強する方がよい.そこで,複数行のボルトを取り外して検討した.その結果,継手中央部の板でも,5行のボルトを取り外すとすべり荷重が設計荷重を下回ったが,2行ないし3行のボルト取り外しであれば,安全性が担保されるという結果が得られた.
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