研究課題/領域番号 |
19K04583
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
三神 厚 東海大学, 工学部, 教授 (10262122)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 構造物の損傷検知 / 機械学習 / センサーデータ |
研究実績の概要 |
高度経済成長期に建設された膨大な数のインフラが老朽化を迎えている.国土交通省は,橋梁点検五ヵ年計画を策定したが,技術者不足により思ったように進んでいない.1つの改善策は,低廉化が進んでいるセンサーを構造物に設置して得られるデータの分析から,自動的に損傷(異常)を検知する方法を補完的に用いることである.本研究はセンサーデータに機械学習の方法を適用することで構造物の損傷検知を自動化し,インフラ点検技術者不足の問題に寄与することを最終目標としている. 令和元年度は,多自由度振動系に関する数値実験を通じて,センサーデータにオートエンコーダを用いた損傷検知手法の方法論の確立を目指した.まずセンサーデータ信号の前処理について基礎的な検討を行った.具体的には,構造物の応答信号として正弦波を用意し,一部を学習用,全長を検証用として用いた場合に,その部分時系列の取り方の違いや活性化関数の選択によって,オートエンコーダによる機械学習の成否が分かれることや,応答振幅や周波数変化の違いを「異常」と捉えること,またその異常検知は,応答にある程度のノイズの影響があった場合でも可能であることを示した.さらに信号にバイアスの影響がある場合には,その影響を受けることやオートエンコーダの隠れ層のサイズについても検討を加えた. 以上の検討をもとに,多自由度振動系を用いた検討に取り組んだ.構造物に対する入力として,定常入力と非定常入力の場合を考え,それぞれに対し「損傷なしモデル」と「損傷ありモデル」とを用意し,損傷検知性能について数値実験的に比較した.検討の結果,定常入力,非定常入力とも,損傷検知は可能であるが,損傷レベルが小さくなるに従い,損傷の検知は困難になることや,多自由度系においては,損傷部材の位置によって,検知性能が低下することなどがわかってきた.研究成果の一部は,第39回地震工学研究発表会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた検討を実施しており,概ね順調ではあるが,これまでにこの研究に対し,「用いた機械学習の方法のパラメータの設定根拠を明確にすること」の意見を頂戴し,機械学習を用いた損傷検知の成否のみならず,その結果に至るメカニズムについての検討の必要性も感じるに至った.そのため,現在は,機械学習による損傷検知のメカニズムについて検討を加えている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に加え,機械学習による損傷検知のメカニズムについての検討も必要であると思われる.そのため,研究実施計画を維持しつつも,XAI(Explainable AI,説明可能なAI)のような新しいAI技術から知見を得,本研究の推進に活かしていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が当初の見積もりより安く済んだため,16000円程度の次年度使用額が生じた.これについては,新たに検討が必要となった「機械学習による損傷検知のメカニズムについての検討」のための文献等の購入費用に充てたい.
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