令和3年度までの研究予定期間を経て,地震などの外力によって損傷した鋼I桁橋梁の支点周辺ウェブの一部を取り囲むようにひずみゲージを添付し,ひずみ情報を計測する「計測グリッド」の設置条件ならびに,ひずみゲージ情報から仮受けジャッキによる死荷重開放までの過程で,計測グリッドから得るひずみと部材断面の幾何的情報から,支承に作用する断面力を高い精度で推定できる手法を構築した. 提案手法は,ジャッキアップ対象となる鋼I桁ウェブの片側に貼付で精度を得ることができるため現場でのゲージ施工性において非常に簡便である.このゲージ計測手法により,一般に用いられる応力測定機器によりジャッキアップを安全確実に制御可能である.この技術に関連する研究成果は,論文1,2で発表済みであり,これらをまとめた研究成果は査読付きジャーナルに投稿して,現在審査中である. 続いて,死荷重を考慮した鋼I桁のジャッキアップ点の補強部材の推定に関して,当初の研究計画では,ジャッキアップで生じる仮受時のジャッキアップ力を解析モデルの力学的な境界条件として,FEM解析モデルを構築する計画であった.しかし,解析モデルで必要となる要素数に対応したひずみゲージの必要測定点数が必要となるなど,課題が浮き彫りとなった.この課題を解決するために,油圧ジャッキシステム側に新たな制御方法を構築した. 具体的には,ジャッキアップ荷重の検出信号に,ひずみゲージによる計測グリッドの情報をデータロガー内部の演算による荷重信号としてフィードバックすることで,ジャッキの荷重増分に対する,実際のジャッキアップ荷重を安全確実に制御するシステムである.このシステムによるジャッキアップ操作と,FEM解析による連携によって,当初研究目的としていた,安全で確実なジャッキアップ手法の構築は概ね達成されたと判断している.
|