研究課題/領域番号 |
19K04591
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
中村 大 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90301978)
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研究分担者 |
川口 貴之 北見工業大学, 工学部, 教授 (20310964)
川尻 峻三 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80621680)
宗岡 寿美 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50301974)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植生工 / 豪雨 / 補強効果 / 表層崩壊 / 侵食 / 風化 / 凍結融解 / 降雨浸透 |
研究実績の概要 |
豪雨による土構造物の崩壊を予防する手段としては,北海道では自然環境に配慮できる植生工が優先的に採用されてきた。しかしながら,現在の植生工は豪雨を想定した設計・施工となっておらず,今後の気候変動に対応できていない。そこで本研究では,植生工に期待される3つの補強効果(表層崩壊の抑制効果,雨水による侵食防止効果,切土のり面の風化抑制効果)について,各種の室内試験や屋外模型実験,原位置計測で網羅的に解明することに取り組んでいる。 研究2年目はまず,植生工の表層崩壊抑制効果に与える降雨浸透の影響を明らかにするため,飽和度を変化させた供試体を用いた定圧一面せん断試験を実施した。供試体には土試料に播種して植物を生育させ,根系を発達させた植生供試体を用いた。試験の結果,植生供試体ではせん断変位が大きな領域において,せん断抵抗が大きくなることが明らかとなった。また,飽和度が増加するに従って植生供試体のせん断抵抗が減少することが確認されたが,植物根系による土の補強効果そのものは失われていないことが明らかとなった。 次に,侵食防止効果に与える凍結融解の影響を明らかにするため,凍結融解履歴を与えた植生供試体を用いて,侵食抵抗試験を実施した。試験の結果,植物根系や茎葉が土の侵食抵抗を増加していることが明らかとなった。しかしながら,凍結融解履歴を受けると,植物根系の侵食防止効果は低下してしまうことも確認された。 さらに,浸透抑制効果については,植生工を模擬した屋外模型実験を開始した。計測期間中は比較的降水量の少ない降雨イベントしか発生しなかったが,植生工を模擬した盛土斜面では,植物の茎葉が雨水を流下させて,盛土斜面深部への浸透を抑制していることが確認できた。 最後に,風化抑制効果を明らかにする目的で,泥岩からなる切土のり面で実施している凍結深,凍上量の原位置計測については,研究2年目も継続して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目も,植生工に期待される3つの補強効果(表層崩壊の抑制効果,雨水による侵食防止効果,切土のり面の風化抑制効果)を解明するための各種の室内試験,屋外模型実験,原位置計測を継続して実施した。研究は当初の計画通りに進んでおり,得られた成果については,各種の学会で公表している。 まず,植生工が有する表層崩壊抑制効果については,植生供試体を用いた定圧一面せん断試験により,根系による補強効果を定量的に評価することができた。また,これに与える飽和度の影響についても明らかにすることができた。 次に,侵食防止効果については,研究初年度に開発した試験装置を用いて,侵食抵抗試験を継続して実施した。研究2年目は,凍結融解履歴を与えた植生供試体に対して侵食抵抗試験を行い,植物根系の侵食防止効果に与える凍結融解の影響について定量的に評価することができた。 さらに,浸透抑制効果については,研究初年度に作製した模型土槽内に,植生工を模擬した盛土斜面を構築して土壌水分センサを埋設し,その計測を開始した。この模型土槽は降雨に伴う表流水,浸透水の量を計測できるように工夫している。計測の結果,降水量の少ない降雨イベントでは,植生工の浸透抑制効果を確認することができた。 最後に,切土のり面の風化抑制効果については,植生工が施されていない泥岩からなる切土のり面に,地中温度計や凍上量計などの各種の計測機器を設置して,凍結深さと凍上量を計測した。計測の結果,凍結融解が切土のり面を大きく風化させていることが確認できた。 以上のように,当初の計画通り,研究を順調に進めることができているため,区分を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目も,各種の室内試験および屋外模型実験,原位置計測を引き続き実施していく.また,植生工の補強効果に与える降雨浸透や,寒冷地特有の凍結融解の影響についても,検討を継続していく予定である. 植生工の表層崩壊抑制効果については,植生供試体に対してのり面表層を模擬した小さな鉛直応力で定圧一面せん断試験を行っていく予定である。 次に,侵食防止効果については,侵食抵抗試験を継続して行っていく。研究2年目までに,外来草本植物であるケンタッキーブルーグラスの侵食防止効果について明らかにできた。研究3年目では草本植物に在来草本を用いて植生供試体を作製し,侵食抵抗試験を実施していく予定である。 さらに,浸透抑制効果についても,屋外模型実験を継続して行っていく。ただし,計測期間中に豪雨に相当する大雨が発生するとは限らないため,散水装置で豪雨を再現した実験を実施する予定である。 切土のり面の風化抑制効果についても,凍結深や凍上量などの原位置計測を継続して行っていく。また,コーンペネトロメータを用いて,切土のり面の風化の度合いについても計測していく。
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