ファイバースコープを用いた映像から,豪雨による地すべりで破断が見られたアンカーを対象に破断箇所付近の観察を行い,アンカーを保護するシース管が曲げ変形を受けて閉塞している事を確認し,すべり面付近の破断は,曲げ外力を受けた曲げ変形と軸方向の引張力が加わった曲げ引張り破断であることを明らかにした。健全なのり面で発生したアンカー頭部付近の破断に対して調査を実施した結果,アンカーの施工角度が当初設計と異なり,施工時に受圧板とアンカーが接触することで傷がつき,そこから雨水等が浸入してアンカーが錆びて劣化が進行し破断に至ったものの,頭部付近で破断した場合には飛び出し量は小さいことを明らかにした。アンカー破断時の飛び出し対策として,アンカー破断時の弾性エネルギーが飛び出時の運動エネルギーと一致することを基に,飛び出し時の運動エネルギーを摩擦力等により低減させる方法について検討を行い,アンカーの飛び出し量を抑制できることを確認した。 本研究では,従来あまり検討が行われてこなかったアンカーの破断について,地震時や豪雨時のアンカーの破断状況の調査を実施し,破断が引張りに加え斜面変状に伴う曲げやせん断が作用することで発生する場合があることを明らかにした。その上で,実物大の試験装置を用いた実験より,アンカー規格毎の破断特性について検討を行い,アンカーの規格によって破断形態が異なることを明らかにした。また,アンカー破断時のエネルギーは緊張力に依存した弾性エネルギーにより求まり,これは飛び出し時の運動エネルギーと一致し,この結果からアンカー飛び出し対策について検討を行った結果,摩擦によるエネルギー低減が効果的である事を明らかにした。これらの研究成果は,従来考慮されていないアンカーの破断特性を明らかにするとともに,機能低下が見られるアンカーの維持管理を行う上で大きく寄与できるものとなっている。
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