研究課題/領域番号 |
19K04596
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奈良 禎太 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00466442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 岩盤 / 透水試験 / 透水係数 |
研究実績の概要 |
岩盤やその内部に建設される構造物は,年月の経過とともに力学的安定性が損なわれる。特に,き裂の発生・進展等の力学的要因や,周辺環境の変化等の化学的要因により,適切に設計し建設した場合でも,予想より大きな劣化が生じる。ゆえに,時間経過やスケール拡大に伴う周辺環境や外力の条件変化が力学的安定性に及ぼす影響を理解することは重要である。一方で,材料の特性を把握し,損傷を抑制できる条件を見出し,長期の利用に耐えられるようにすることも重要である。岩石やセメント系材料では,圧縮に比べて引張強度は低い。そのため,岩盤や構造物を長期間安全に利用するには,引張を避けるのが良い。ただし,引張下でもき裂進展を抑制させるとともに,き裂を閉塞させる現象を起こせれば,岩盤や構造物の長期安定性確保に大いに役立てられる。特に,水中環境下でしばしば報告される鉱物の析出によるき裂修復はその一つといえる。この鉱物析出現象を岩石やセメント系材料で利用できれば,どのような条件下でもき裂を修復でき,岩盤や構造物の強靭化を人為的に起こすことができる。つまり,岩盤や構造物を長期間安全に利用するには,鉱物析出によるき裂修復を固体材料内にて持続可能な形で生じさせ,材料を強靭化させる技術を創出することが必要となる。ただし,これはまだ達成されておらず,未解決の課題である。そこで本研究では,岩盤や構造物の長期安定性を確保するシステムを構築することを最大の目的とし,ここでは,鉱物析出による材料内のき裂修復を持続可能な形で生じさせて材料を強靭化させる技術を創出し,岩盤・構造物の長期安定性確保に生かすことを目的とした。 特に、原位置岩盤で計測孔を掘削して透水試験を行い,初期状態の遮蔽性(透水係数)を調べた。その後,炭酸水を岩盤中に注入・保存し,透水係数を再度測定し,初期状態と比較して,原位置岩盤の遮蔽性の変化の程度を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原位置岩盤での透水試験を行い、透水係数の経時変化を測定することができた。この一連の作業及び測定は、極めて難易度の高い技術が必要となる。これをクリアすることができたため、研究が順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、原位置岩盤から岩石サンプルを採取し、岩盤内部での鉱物析出の有無を調べることを考えたい。特に、鉱物析出の有無が岩盤の透水性の変化にどのように影響するかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は予定よりも消耗品や旅費で使用する金額が少なくなったため、次年度使用額が生じた。そこで、2020年度に使用する予定だった消耗品の購入や、測定のための出張旅費を2021年度に充てることを考えている。
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