研究実績の概要 |
本研究では、杭基礎を利用した地中熱利用ヒートポンプシステム(エネルギーパイル)利用時の、地盤と構造物(杭基礎)の熱膨張、流体の熱膨張と移動、土骨格変形の連成挙動を考慮した熱-流体-力学連成解析手法を開発した。 杭体(鉄筋コンクリート)は熱-弾性体ソリッド要素、地盤は土骨格を熱-弾粘塑性体とし三相系材料としてモデル化した。熱粘塑性ひずみについては圧密降伏応力の温度依存性によって考慮した。地盤は不飽和状態を扱えるよう空気-水-土三相系材料とし、熱伝導については混合体の平均的な比熱、熱伝導係数を用いて一相材料として扱っている。 定式化に用いた支配方程式は各相の運動量保存則、各相の質量保存則、全体相の熱エネルギー保存則、構成式である。離散化は有限変形理論に基づきupdatedLagrangian 法を採用し、空間離散化は有限要素法による。 最終年度となる本年度は、上述の定式化に基づいて数値解析法を開発した。また、Lalouiら(Int. J. Numer. Anal.Meth. Geomech., 2006)による実証試験の再現解析を参考にして、モデル作成と材料定数の決定を行い、沖積粘土層に杭基礎を設置した場合の地中熱利用時(温度上昇時)の力学挙動について考察した。杭頭の拘束条件をフリーとした場合と変位固定とした場合について結果を比較したところ、杭頭固定の場合は地表面近くから杭内部で鉛直応力の増加がみられた。杭頭フリーの場合は温度膨張により約0.5mmの変位が生じた。
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